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2013/08/15

柴田 元幸, 高橋 源一郎 「小説の読み方、書き方、訳し方」

二人の著者の対談集。
とにかく二人ともかなりの量の本を読んでいる。それでも、柴田元幸は、たくさんの本を読みその中から「これは訳すべきだ」と判断して訳しているというよりも、読んで気に入ったものを訳している、らしい。

最近は小説がなんとなく力を失ってきているような気がする。そのこと、というか、日本で書かれた小説についてやや外部的な視点から語っている。

たとえば、小説というものはなくなるか、という問いに対して、

小説は、等身大の人間が出てきて何かを行うという形の言語表現なんです。これが存在価値を失い、消滅して、この世界の中でまったく意味を失うとは、僕には思えないのです。
...
我々の中に「本当のものはどこにあるか」とか「生きているとは何か」とか、なにより「人間とは何か」という問いがある限りは小説は求められ続けるはずです。
その問いがなくなったら小説はなくなるだろうし、詩もなくなるかもしれない。その問いに答えられる能力を持っているものが小説なのだ、と高橋源一郎は言う。


この本の最後の方に出てくる 60冊(両者で30冊ずつ)の小説のリストには、読んだことのある本がほとんどなかった。日本の小説を海外の人に紹介するとしたら、という設定で選んでいるからいわゆる名作ではないし、すでに知られているものはあえてはずしているという特徴もある。

このリストと選択の理由を語る対談では、高橋源一郎が、リストの最後に入れてある綿矢りさの作品について「(以前に対談した保阪氏が)「これで近代文学は息の根を止められたね。」とおっしゃっていましたが、僕も同感です」と言うところがある。
これについてのコメントが興味深かった。


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