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2008/04/30

柴田芳樹「プログラマー現役続行」

技術評論社 柴田芳樹著 技術SE選書シリーズの一冊。

著者はJavaの技術書の翻訳などを行っている人だが、本書によれば、業務ではC++の組み込み開発のコンサルティングとソフトウェア開発を行っているらしい。つまり、独自の学習でJavaに関する知識をある程度は身につけたということだ。もちろん、ここまでJava業界で有名になれば学習も進みやすくなるということはあるだろう。

本書のタイトルは、現役続行だが、50歳からの心構えを説くような内容を期待すると(期待する人はいないと思うが)間違いだ。新人から数年の実務経験のある人が読むべき本だ。

本書を読んで学ぶべきことが多くあったという人は実はあまりいないのではないかと思う。しかし、わかっていてもできていない人は相当数いるだろう。自分の学習を自力で継続しなければならない、ということが何度も形を変えて書かれている。その学習のポイントはソフトウェア開発全般に限らず、英語、コミュニケーション、などである。

著者のポイントではないかもしれないが、驚いた内容もあった。
たとえば、何年もC言語を使用して組込みシステムを作ってきたエンジニアで、ポインタの使用方法を知らない人がいるとは想像できないかもしれませんが、実際には知らない人がいます。なぜ知らないかというと、グローバル変数を多用した設計しかしたことがなく、構造体であっても、決してパラメータとしてそのポインタを渡す設計をしたことがないからです。

著者はこのようなやや極端な実例も提示しつつ学習の重要さを伝えようとしている。

もう一つ強調されていることがあるとすれば、会社に頼り過ぎないこと、である。

ちなみに、本の帯は
「管理職にならなくたっていい。現役続行にこだわり続ける職人気質」
である。これもちょっとあやまった惹句のように思う。
プログラマー現役続行 (技評SE新書 12)プログラマー現役続行 (技評SE新書 12)
柴田 芳樹

技術評論社 2007-09
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2008/04/28

カーニハン プローガー「ソフトウェア作法」

読了とは言っても、この本は読むだけの本ではおそらくない。各章にある問題は、本に掲載されているソースファイルを打ち込んで修正を設計し、作業を行い、稼働させる、というところまでを読者が行うことを前提としている。そういう点で言うと言語がRATFORであることは少し残念だ。

本書のさいごにある「エピローグ」は短い文章だが読んでおく価値はある。まず、
複雑さの管理はプログラミングの真髄である(略)
もっとも低いレベルについていれば、われわれは制御構造を注意深く選び、それを注意深く使った。(略)
また、各機能単位は、高い内部結合度を有しており、したがって独立の単位を形作るにふさわしい理由を持っていた。(略)
最後に、もっとも高いレベルについていえば、われわれはプログラムを、互いに共存できるっように作った。その結果、新しいプログラムを書く代りに既存のプログラムを組み合わせることによって複雑な仕事処理することができることとなった。

これらの構造面での方針とは別に、プログラミングそのものについての指針もある
 第1の指針はもっとも大切である。それは単純さを保とうというものである。(略)
第2の指針は、以上と関連している。それは段々に作れというものである。(略)
第3の指針は、直観によく訴える。それは面倒なことは他人にやらせろというものである。

この部分が習得できていればソフトウェア開発はかなりうまくいくはずだ。しかし、実際、プログラムを書いたり、他人のプログラムを直したりすることなしにはこれを体得することはできない。

だから、この本が価値があるものになるのだ。この本を読み返し始めるときにblogにエントリを書いておいた。ほぼ毎日少しずつ読み進めて3か月以上かかった。
ソフトウェア作法ソフトウェア作法
木村 泉

共立出版 1981-05
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2008/04/21

福岡伸一「生物と無生物のあいだ」

しばらく前に話題になった本がふと読みたくなり、ブックオフで購入。新書の価格だとamazonの古本よりもブックオフが安いことが多い。

著者の福岡伸一氏は青山学院大学の教授で、分子生物学が専門。

なのだが、、語り口が通常の科学読み物よりもドラマチックで物語的。しかも、本書の最初に「生物と無生物との間にはどのような界面があるのだろうか」という問いを一旦おきながら、DNAの発見にいたるドラマ(エイブリー、シャルガフ、ロザリンド・フランクリン)、ポスドクの生活観、PCRの発案者キャリー・マリス、著者がかかわったGP2タンパク質の解析、などの個々の話が面白い。

科学者の発見がドラマチックだというのは、たとえば、キュリー夫人の伝記のような刷り込みはあるが、部分的に当事者であり存命である日本人が、こういった語り口で生物科学の一断面を生き生きと語ってくれることは読者にとって幸福なことではないだろうか。

今から生物科学を志そうとは思わないが、DNAとかタンパク質を扱う中にもこういうどきどき感があるのだなあ、と感心した。
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
福岡 伸一

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2008/04/15

レースプログラム

レースに行っても毎回レースプログラムを購入することはないが、シーズンの初めは番号やチームの変更が多いため、プログラムなしではレースを見ていてもよくわからないことがある。

今年は、鈴鹿サーキットのスーパーGTとツインリンクもてぎの全日本ロードレースでそれぞれプログラムを購入した。比べてみると鈴鹿のスーパーGTの方が分厚い。内容は似たようなものだが、スーパーGTの場合は全選手を紹介している。これは参加選手数が多い全日本ロードレースでは難しいことだ。

どちらも価格は1000円だ。もしかするとモビリティランド系列の鈴鹿ともてぎでは同じ値段だが、他は違うのだろうか。2007年のもてぎの全日本ロードレースのプログラムが手元にある。これには故阿部典史選手(ノリック)のインタビューが載っている。ノリックの国内復帰初戦だった。捨てられない一冊になった。

細かいことだが、鈴鹿のスーパーGTのときに、予選結果を印刷したものをもらえるのはプログラムを買ったとき(あるいは予選日に買っているとき)に限られる。一方、もてぎの全日本ロードレースでは予選結果だけを無料で配布している。

スーパーGTは車番と選手がおおよそ頭に入っているのでなんとかなるのだが、二輪の場合、クラスと参加選手が多いので選手の名前と車番は全く一致しない。プログラムが買えないときには予選結果が無料でもらえるだけでもかなり助かる。

無料かどうかはもしかするとサーキットによっても異なるかもしれない。

2008/04/11

[中学校] 海老名市立柏ヶ谷中学校ウェブサイト開設

柏ヶ谷中学校のウェブサイトが開設された。
数年前にもウェブサイトによる情報発信はなされていたのだが、そのサイトはいつの間にかなくなっていて、インターネット上での情報はなかなか取れない状態だった。

実質的には今年度から稼働開始になるようだ。ウェブサイトは立てることよりも維持すること、手をかけることの方が難しい。一方、保護者や地域はインターネット上で情報を得ることができるのは非常にありがたい。

[柏ヶ谷中学校] 2008年度 離任式

2008年4月8日(火)
柏ヶ谷中学校で離任式が行われた。

今年、異動される先生は3名。
  • 大島 克夫教頭先生 (今泉中へ)
  • 溝口 正則先生  (今泉中へ)
  • 玄行 良治先生  (教育委員会へ)
溝口先生、玄行先生はもう柏ヶ谷中学校在任が長く、同じ時期に柏ヶ谷中に来られた先生はかなり異動された。
溝口先生は吹奏楽部、玄行先生は野球部の顧問をされている。野球部は楢原先生が後を受けることが決まっている。吹奏楽部はどうなるのであろうか。

大島教頭は花いっぱい委員会の花にいつも水やりをしていた、と保護者の方がおっしゃっていた。

着任された先生方は
  • 谷川 治教頭先生 (大谷中より)
  • 吉谷 朋子先生 (海老名中より)
  • 久保谷 由美子先生 (東大阪市より)
  • 甲賀 真理子先生 (新採用)
  • 蒲原 英太先生 (杉久保小学校より)
の5名。

追記:
 吹奏楽部は甲賀 真理子先生が顧問に就任されたとのこと。

2008/04/04

小寺信良、津田大介「コンテンツ・フューチャー」

小寺信良、津田大介著「コンテンツ・フューチャー」 ~~ポストYouTube時代のクリエイティビティ~~
二人の著者が現在の通信や放送、コンテンツ領域で話を聞きたい人たちを訪ねてインタビューし、それをまとめたもの。二人で話を聞いているのが良い効果を生んでいる。一人だと切り口が決まってきてしまうが二人いることにより、ワンパターンな質問で飽きが来てインタビュー自体のノリが悪くなるのを防げた。

合計9人のインタビュー。土屋敏男(第2日本テレビ)、草場大輔(東京MXテレビ)西谷清(ソニー)、長谷川裕(TBSラジオ)椎名和夫(音楽家)、遠藤靖幸(価格コム)、江渡浩一郎(産総研)、中村伊知哉(慶応大学)、松岡正剛(編集工学者)。

どの人も面白い話をしているのだが、読んでいてわからなかったのは江渡氏と松岡氏。二人とも独自の世界を作り上げていて対談は成立しているのだが言っていることがわからなかった。

総じて、コンテンツ関連の人の話は面白く、ラジオのディレクターであるTBSの長谷川氏はラジオそのものはなくなるかもしれない(しかしコンテンツはなくならない)と考えていたりするし、MXテレビの草場氏は「ネットがテレビを救っている」と言う。

逆に意外と面白かったのは中村氏。通信行政にかかわった立場から、今の行政や法体系を大きく変更したらどうかと提案している。実際に総務省内の通信・放送行政タスクフォースで議論しているらしい。ただ、発言を聞いていると日本でここまでの変更が可能なのかと思う。たとえば
中村 はじめの一歩としては、コンテンツはコンテンツでちゃんと国の意思が決められるような組織や法体系を設計することだと思います。通信であろうが放送であろうがコンテンツ側から見たら区別がないでしょ。もうあんまり規制する必要はないんです。今の放送法みたいに、放送だったら何でも網をかけるようなことはしないで、ごく一般的な「緩いルール」があるようにする。その上でチェックしなきゃいけないことはチェックすると。(略)ただし、「著作権」についてはたぶん新しいルールを作って整合性を取らなきゃいけない。役所が違ったら結局バラバラになっちゃうから、一度壊して再度作るということをやる時期に来てると思います。

というような再構築を提案しているからだ。つまり既存の役所の抵抗がある程度予想される方向なので今の政治状況でできるかどうか。今考えられることが正解ではないかもしれないが、技術の変化が速い時期だから、こういう試行錯誤を繰り返しながら暫定合意を取りつつ現状に対応していくしかないのだろう。「暫定了解・暫定合意の10年」に入ったと中村氏は言っている。

この本はクリエイティブコモンズで、「表示ー非営利ー改変禁止」条件で複製が可能である。つまり本をコピーしてもいい、ということだ。だから、これを学校などで資料としてコピー配布することを認めている。公開当時はこの規定の利用のデモンストレーション的にPDF化した人がいたのだが、OCRを使ったためか誤植が多くなっており、あまりインターネット経由のユーザには便利ではなかったことを覚えている。

2008/04/02

永六輔「大往生」

永六輔はTBSラジオで長寿番組を持っている。これを聞いたことがきっかけとなって興味を持ち入手した本が岩波新書の「大往生」。

街の人たちの語録、永氏の盟友だった中村八大、いずみたくの死への思い、淡谷のり子を迎えた対談、などが、永氏の亡父である故永忠順氏に捧げられている。

本の前半は語録、後半はエッセー風な読み物になっている。

「遺言状を書く勇気もなくて、よく死ねるネ」
☆弁護士会も、税理士会も、遺言状を書くようにすすめている。アメリカの企業の責任者は八五パーセントが遺言状を書き、日本では八五パーセントが無関心だという。良い葬式のためにも「故人の遺志」は重要であり、その証拠が遺言状なのだ。
遺言状を書いてみると、自分が何を大切に生きているかも確認できるから、この本を読み終わったらすぐにでも!


と書いている永氏自身が「病院で死ぬということ」の著者の山崎医師との対談の中では

 ぼくは何度か遺書を書こうと思ったんですよ。でも、途中でやっぱりイヤになってやめちゃった。だんだん悲しくなって。自分の死を見つめるというのは、たいへんなことなんですね。先生はいかがですか?

山崎 書いていません。漠然と、まだ生きられると思って(笑)。(略)


と言っている。考えていても実行に移すことは大変なようだ。
大往生 (岩波新書)大往生 (岩波新書)
永 六輔

岩波書店 1994-03
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