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2009/01/27

田中 真澄 「50歳からの定年予備校」

年齢的にこういう本も読んでおこうということでブックオフで入手。

このジャンルの本に「元気をもらいました」と書くのは嘘っぽくなるが、もう50歳だから、と言うよりは「まだ50年も残っている」と考えてみようかな、と思った。

人生100年時代が目前であり、年金制度が崩壊していくなかで定年を迎えてもそこからさらに「一身にして二生を生きる」サラリーマンが多くなるべきである、という前提で積極的な能力開発を行い独立せよ、というのが著者の主張。とは言ってもここで独立とは事業を始めることだけではなく広義に

生涯を通じて、自分の潜在能力を開発し、世のために尽くす

が対象。企業家ももちろんたくさん例示されるが、他に扇の研究や古歌の研究をする老人も紹介される。

「個業家」として独立して生きるために自分の潜在能力を開発すること、そのための資源として「」「時間」「言葉」の3つがある、という。それぞれについてどのようにして能力を伸ばすかを説いている。

基本的な立場として、著者はどの人にでも潜在能力はありそれをある目標設定に従って開発するかどうかはその人次第であるとしており、多くのサラリーマンは会社依存になっていてその能力開発を十分に行っていない、と考えているようだ。ところが、会社に依存できる時代は終わっており、おまけに、年金制度の崩壊も確実なのだから、定年後も「余生」を送ることはできそうにないし、その必要もない。そこから「老年起業」を目指せばいいではないか、と言う。

個々の項目については、よくある「早起き」などもあって、またか、という気もするのだが、一方で残業をせずに自分の時間を能力開発に使うべき(そのために早く職場に出て効率よく仕事をするべき)、など、サラリーマン経験でおそらく実行されたと思われる提言もある。

一貫して「実行してください」と言う項目が多い。かと言って、独自な方法が次々と出てくるわけではなく、最近読んだ他の本でも勧められていた項目(人脈を作る、など)もあって、結局、どの本を読んでもやらなければならないことは大きく変わることはないのだな、と納得。

逆に言うと、これ以上はいろいろな本を読まなくてもいい、というか、共通点だけ採用すればいい。一冊だと、どうかな、と思うことも数冊で共通して書いているとやってみてもいいかなとなるので、何冊か読んでみることは必要かもしれない。

2009/01/21

藤原 和博 「自分[プレゼン」術」

藤原和博氏は、保護者世代を中心に東京都杉並区立和田中学校の校長として有名だが、この本はリクルートのフェローである藤原氏が書いたものとして読んだ方がいいかもしれない。取り上げられる題材には、この後に校長という職務を引き受ける藤原氏の個人史のようなものがちらちら見えるところもある。

まえがきにある「キャラクターの全体像をどうやって他人に分かってもらい、思いや企画を通りやすくするか」というのが本書のテーマ。単に「人脈」という切り口ではなく、本を書いた著者として本屋まわりをする、とか、リクルートで「じゃマール」を立ち上げたときのプレゼン、などと言った泥臭い実例が多くあるのがいい。

著者は何よりも第一印象を重視していて、名刺や訪問のやり方から接待の仕方など会社員生活で出会いそうな項目に対して著者が今まで蓄積したノウハウを披露する。

プレゼンの例では、成功物語ではなく自分がそこから何かを得た「語り得る失敗」を入れることでエネルギーが流れ込む、とか、口コミになるようなキーワード(エピソード)を入れれば何度も繰り返す必要はない、「初めよければすべてよし」だから起承転結では失敗する、あえて手書きの雰囲気を持った資料づくりなど、独特なコツも書かれている。

あとがきの後に、著者のテーマ別(住宅、仕事、教育、介護)書評が読める。この書評がかなり面白い。

2009/01/19

[SBK] 2009年カレンダー

world superbikeのオフィシャルサイト上で 2009年シリーズのカレンダーが発表された。ブランズハッチ(イギリス)バレルンガ(イタリア)が抜け、キャラミ(南アフリカ)、イモラ(イタリア)が追加(復活)している。

March 1 フィリップアイランド(Phillip Island) Australia
March 14 ロサイル(Losail) Qatar
April 5 バレンシア(Valencia) Spain
April 26 アッセン(Assen) Netherlands
May 10 モンツァ(Monza) Italy
May 17 キャラミ(Kyalami) South Africa
May 31 ソルトレークシティ(Salt Lake City) USA
June 21 ミサノ(Misano) Republic of San Marino
June 28 ドニントンパーク(Donington Park) Europe
July 26 ブルノ(Brno) Czech Republic
September 6 ニュルブリュクリンク(Nurburgring) Germany
September 27 イモラ(Imola) Italy
October 4 マニクール(Magny Cours) France
October 25 ポルティマオ(Portimao) Portugal

開幕のフィリップ・アイランドからもてぎか鈴鹿あたりに移動して第2戦を開催してくれるといいのに。日本人選手が多いし市販車ベースだからみていて面白いと思う。

JSPORTSのウェブサイトを見るとSBKのリンクがなくなっているので放送がなくなるのだろうか。日本人ライダーが多く活躍するシリーズなので放送してほしいのだが。

追記:

JSPORTSサイトにSBKコンテンツが復活した。よかった。




2009シーズン DVD (発売:Wick)

2009/01/17

岸良裕司「マネジメント改革の工程表」

「工程表」という言葉そのものが、急速に(「小泉改革」と同様に)手垢にまみれた印象があり、その点では題名でこの本はかなり損をしていると言える。

プロジェクトが失敗すると進捗報告などの仕掛けを多く入れることになり、間接工数が増えることで、さらにプロジェクト失敗のリスクが高まる、という負のサイクルが回ることになりがちだ。

プロジェクトにおいてサバを読むという行為を外部化して、プロジェクト共通の「余裕」(親方バッファ)としてリソースとみなし、そのかわりにスケジュールは「できるかできないか」ぎりぎりに設定する。「あと何日」というシンプルだが強力な時間管理することでプロジェクト参加者の意識を将来に向けてそろえる。クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント(CCPM)という手法がこの本の中心である。

プロジェクトの最初の段階で、目標(Objective)、成果物(Deliverables)、成功基準(Success Criteria)の3つを「全員で議論」し共有する。さらにタスクを定義して後ろからスケジューリングすることを「科学的段取り八分」と呼ぶ。「段取り八分」という日本の会社でよく聞いた言葉がこの文脈で再生されている。
  • 目標が社会通念に外れないか
  • 経営目標と合致しているか
などを満たすプロジェクトの大義名分があるか、がメンバーのやる気を向上させる、らしい。

全体を通して感じるのは、個々の技術や方法論は成功率の高いプロジェクトマネジャーはすでに身に付けているだろう、ということだ。乱暴な言い方をすれば、そのような手法を再構築し、わかりやすく体系化したにすぎない、とも言える。実は、従来は上司から部下へと暗黙知として伝達されていたものかもしれない。

本書の内容を通底するのはCCPMという手法を入れることによってプロジェクトに関係する人たちのコミュニケーションが改善できる、という主張である。このあたりは最近読んだ「不機嫌な職場」にも通じるものがある。

2009/01/12

[WTCC] 2008 第23,24戦 マカオ

世界ツーリングカー選手権 (FIA World Touring Car Championship (WTCC))
マカオでの最終戦。レースとしては23戦、24戦になる。

GAORAで観戦。
実況はピエール北川氏、解説は木下隆之氏。

第23戦
ポールポジションはアラン・メヌ。アンディ・プリオールが2番手。
ドライバーズタイトルはまだ決まっていない。イバン・ミュラーがトップ。2位以上に入れば、ポイント2位のガブリエル・タルキーニがトップになったとしても自力で優勝が可能。

日本人選手は
青木 孝行 19番手スタート
加納 政樹 25番手スタート
織戸 学 27番手スタート

マカオは公道を使ったストリートコースで、海側から山側に登って降りる。海側は割合い広く対抗2車線を全部使えるが山に登るにつれて徐々に狭くなり、2台並べないところが多い。また、山側にはすごいヘアピンがあり、ここを頂点として降りはじめるコース。これまでセアトは勝ったことがないが、「ディーゼルターボによりストレートスピードが上がったので海側で引き離し山では抑えるレースが可能になるので、セアト有利」木下氏。

サイドミラーを飛ばして攻めるぐらいで丁度いいぐらいというドライバーもいるらしい。

サクセス・バラストは最大限の70kgの選手が10人以上いる。

ローリングスタートから先頭メヌが逃げる。後にプリオール、イバン・ミュラー、ロバート・ハフ、リカルド・リデルと続く。最初の周回のリスボアコーナーでハフとプリオールが並んでコーナーに入り、どちらかはサイドミラーを飛ばした。
リデルが5周目でスローダウン。

アレッサンドロ・ザナルディが山側でトラブルから斜めに停止してしまいコースをせまくしているぐらいで、狭いコースでクラッシュが多いと言われるマカオにしては車どうしのクラッシュが少ない。

最終周にかけてメヌとプリオールの差が詰まってきて、メヌはタイヤスモークを上げて逃げる。
プリオールはメヌをパスするまでのスピードはなく、メヌ、プリオールの順にフィニッシュ。
タルキーニが7位フィニッシュ、イバン・ミュラーが3位となり、ミュラーはドライバータイトルを確定させた。
インデペンデントクラスは、セルジオ・エルナンデスがタイトルを確定させた。

セアトはマニュファクチャラーズタイトルとドライバーズタイトルの両方を獲得。

インタビューではミュラーは、同じチームのリデルがトラブルを起こしたので不安に思っていたことと、オイルがコース上にあってゆっくり走らざるを得なかったこと、小さいトラブルを抱えていたことなどを話していた。プリオールに追いつかれたのはそのためだったようだ。

「WTCCに使用されるS2000クラスの車はそれほどエンジンパワーが大きくないので、ドライバーがうまければコントロールすることができるため面白いレースが見られる」木下氏。

青木選手、加納選手はリスボアでクラッシュ。織戸選手は16位。

第24戦
リバースグリッドとなり1位から8位が逆順でスタンディングスタート。
日本人選手は
青木 孝行 23番手スタート
加納 政樹 26番手スタート
織戸 学 16番手スタート

8位のジェームズ・トンプソンがポールポジション。車はアコード、エンジンはM-TEC(無限)。
ニコラ・ラリーニはシボレーのファクトリーチームで今シーズン一人だけ勝っていない。「来年に向けて成績を上げたいところ」木下氏。

フェリックス・ポルテイロがピットで作業をしていてピットからスタート。結局、すぐにピットインしてリタイアとなった。ティアゴ・モンテイロ、ザナルディもピットスタート。第1レースと第2レースの間隔が短いので修復が難しいトラブルも多い。

「スタート直後のFFはブレーキングが(前だけなので)厳しい。」リスボアで後ろからパスされるかも、と木下氏。

スタートからラリーニが明らかなフライングスタート。トンプソンはリスボアにトップで飛び込めた。

アンドレ・クートがカーブでクラッシュ。ヨルグ・ミュラーも巻き込まれた。TVでも音が聞こえるほどのクラッシュ。

この後、トム・コロネル、ラリーニ、ジェネ、エルナンデスもリタイア。気温・路面温度が高くなっており、車にトラブルなのか。

後2周のところでトンプソンがクラッシュ。ビデオを見るとリアが滑っている。「アコードのリアがあれだけ滑るのは考えづらいのでオイルにのっていたのでは」木下氏。

このあと、トンプソンは壊れたままでピットを目指して走り、オイルをコースに撒く。このオイルに乗って上位もクラッシュ多発し、完走フィニッシュできたのは10台。

ハフ、イバン・ミュラー、プリオールの順にフィニッシュ。織戸選手が7位に入った。青木選手はトラブルで止まったが完走扱いで15位。
インデペンデントはベテランのフランツ・エングストラーが1位になって大喜び。

2009/01/11

志賀内泰弘 「タテ型人脈のすすめ」

ビジネス本の一ジャンルに「人脈」をテーマにした本がある。この本もその一冊。あまり気が向かず読んでいなかった「人脈」本も読んでみると案外面白い。「タテ型人脈」の「タテ」は「タテ社会」のタテかと思ったらそうではなく、数だけを目標にするヨコ型に対して、人脈の質(深さ)を問うタテだ。

著者の人脈づくりの大道具は、一貫した活動である「ギブ・アンド・ギブ」である。が、その大テーマだけで押しまくっている本ではなく、小道具としての「ハガキ」(日に三通)や「名刺」(会社用ではなく個人用を自分で作る)、「オリジナル・グッズ」(煎餅や金太郎飴など、ちょっと費用はかかるが面白そう)など、自分で活用しているものを紹介してくれる。

たとえば、名刺交換してもそのままほっておくと「使えない人脈」のままだが、それを深くタテに掘ることでダイアモンド鉱脈にぶつかる。鉱脈は地下でつながっているので、すべての名刺で深く掘ることはできなくても心配ない、という。

また、異業種交流会に関しては「うまい話」を探している人が多くいるのでそれを見分ける修行の場にはなるがそこで多くの出会いを過剰に期待することはできない。「講師と知りあう」、「重要な一人の人に出会う」場とするべき、と一般的に言われているのとは少し違う使い方を勧めている。

「人脈」に関する話は人間関係に関することなので、状況に応じて取るべき戦略が変わる。「ギブ・アンド・ギブ」と言いつつ「頼みごとはすることで人脈力が強くなる」と説く。一方で友人をお客様にしないためには「お金に関する頼みごとを我慢することが人脈力を強くする」という秘訣がある。こう書きながら一度だけこの伝家の宝刀を抜いて自分の処女作を友人に買ってもらった話も正直に(?)書かれていて、安心してみたりする。

この本にある方法を実践したとしても著者のように「今では、思うことは、大抵実現してしまう」ほどの人脈力がすぐにできるわけではないだろう。が、「これならできそう」と思うことが2、3個はある。それを試してみようという気にさせる本だ。

2009/01/10

飯田泰之 「ダメな議論 -- 論理思考で見抜く」

「おわりに」で著者はこの本を書いた動機について次のように説明している。
私にとって(おそらく相手にとっても)何の利益も生むことがなかった論争もあります。得るところの多い論争が共通して持っていた性質が、本書でもくりかえし登場した分析的思考の諸条件です。一方、得るところのない批判の多くは、その条件を満たしていませんでした。

議論を見分ける機械的な手法としてこれらの条件を応用することで、経済学の基本をマスターする時間はないが明らかに誤った議論に誘い込まれない方法論を提示している。

4章「現代日本のダメな議論」、5章「怪しい大停滞論争」で、具体的にダメな議論を練習問題的に検討している。その対象となる文のほとんどが「どこかで見たような」言説になっている。たとえば、「現代の若者には夢がないから、ニートになるのだ」と言った(ちょっと乱暴な要約だが)議論である。これに対して「夢」の定義を不明確なままにして議論を進めることで、「反証不可能(合っているかどうかわからない)な議論」になり、結果として水かけ論になってしまう。

著者の専門である経済学で「大停滞」 に関しての「バブル悪玉論」や「国際競争力がなくなった」などの「あるグループの人々の「心に沿う」」議論がある。典型的な例文はそれぞれ欠陥をもつ文章なのだが、それぞれに「なんとなく納得できる」部分がある。それぞれの「ダメの元」をこの手法で切り出していくというところが「実用的」だ。

「日本が世界一の物価高と言った議論は実は間違い」だとか「GDPの輸出依存度は10%程度(さきほど調べてみたら16%になっていた)」など、多くの人がなぜか「常識」と感じている間違いについても指摘を行い、実際はどうなのかデータに基づいた実証的な議論を行っている。この部分は著者の理想とする理論の一実践として読める。

本書に従って考えると、たとえば、「不況の今こそ本物の理論に基づいた政策が望まれます」という文は何か意味のあることを言っているに思えるが、「本物」の経済理論とは何か、という点に関して全くあいまい(チェックポイント1 定義の誤解・失敗はないか)であるし、どういう政策なのかもぼかしている(チェックポイント2 無内容または反証不可能な言説)ので、議論としてはダメなのだ。しかし、いかにこのレベルの議論が多いことか。

2009/01/09

[WRC] 第15戦 イギリス

ワールドラリー選手権 Wales rally グレート ブリテン。
JSPORTS ESPN

最終戦ウェールズ。ドライバーチャンピオンは前戦で決定したが、マニュファクチャラーズのタイトルは今回で決まる。

解説は福井敏雄氏。

「ここの一番の特徴は天候。天候のデパートだ。」福井氏。

STOBART FORDチームからは、バレンティノ・ロッシが出場。

DAY1
降雪でSS1はキャンセル。
57キロにコースが短縮。

タイヤのカッティングが禁止。かつ、タイヤの種類も1種類なので、リスク回避のためキャンセルが増える傾向にある。
SS2からスタートだが路面状況があまりよくない。ロッシは非常に慎重に走っている。セバスチャン・ローブは8位。セバスチャン・オジェが1位。シトロエンはオジェをローブ2世の位置づけで育てようとしている。

SS3では、ミッコ・ヒルボネンは11位。なぜか不調。
SS5のウォータースプラッシュでヒルボネンは車のコントロールを失って転倒。ここまでの全戦でポイントを獲得しているがこの転倒で40位前後まで後退したため、今回は難しくなった。

SS6からは雨。
SS7
クリス・アトキンソンが崖の下に転落。ロールケージが折れたが、ドライバーにはけがはない。

DAY 1終了時の順位は、ヤリ・マティ・ラトバラ、ローブ、PGアンダーソンの順。

山岸舞彩が番組のクイズでポイントをためたので、福井邸でお食事会が催され、その様子が放映された。福井氏の自宅は鎌倉山にあるらしい。和牛や羊が出されている。

DAY 2
イギリスのラリーでは "black ice"がある。これは見えない氷という意味。路面に薄い氷が張っていて滑りやすい。
オジェはタイヤが滑って路肩で転倒。

「スバルは2009シーズンはマーカス・グロンホルムが乗るという噂がある。テストはしているとの情報。」と中新井田D。(収録時点では、スバルのWRC撤退はまだ報道されていなかった)

スズキはDAY1は悪天候がエンジン性能差を帳消しにしていて健闘したが、DAY2で天候がよくなると高速になるため、厳しい。

DAY2終了時の順位は、ラトバラ、ローブ、ダニエル・ソルド。ヒルボネンは9位まで上昇。

DAY 3
気温が低く路面がかなり滑る。
ローブは2番手スタートの利を活かして、前半ステージで逆転したい。結果は1.4秒差で2位。
SS18でローブが逆転したのだが、スタートでフライングしたとの裁定があり10秒のペナルティを受け再び2位に。録画を見る限りではフライングではなさそう。福井氏も「大丈夫ですね」と。
SS19が終わったところでラトバラは「全力を尽くしたからこれで負けれた仕方がない。」

全レース終了して、4.9秒差でローブが優勝。イギリスラリーは初優勝。ここで勝ったことで全ラリー(とはいえ2009年以降初開催もあるし今は開催していないところもあるが)を制覇したらしい。テニスのグランドスラムのように同じ開催地に固定されていないため、そういう一般的な言い方はないらしい。

DAY1以外は天候が安定しており、気温が低いなりに観客も楽しめたのではないだろうか。逆にいえば観客の中でも変化の激しい天候でのレースを楽しみにしていた人たちは残念かも。

また、今回の勝利のポイントにより、シトロエン・トタルはマニュファクチャラーズポイントでも首位となり、両タイトルを獲得した。

福井氏「グロンホルムが引退して抜けた後、フォードはよくやった。」
確かに、今年はローブの独壇場かと思われたが、ヒルボネン、ラトバラ、デュバルのフォード勢はいい勝負をしていた。ラリージャパンまで優勝を決めさせなかったのだから。

2009年は、スバル、スズキがWRCからの撤退を発表し、ファクトリーチームはフォード、シトロエンのみとなりそうだ。2009年中には世界不況から自動車業界が回復してレースを安心して見られるようになるといいのだが、フォードは本体の再生で大変だろうか。

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2009/01/08

[PTA] 次年度委員選出

当中学校のPTAでは、委員は3年生の保護者に限定されている。これはいつのころからの慣習なのか不明だが、私が知る限りこの数年間はそのルールで運用されている。

次年度の委員数は地区ごとに校外委員会で決定し、それぞれの地区で保護者を集めた集会を開く。

理論上はそこで立候補を受け付けるが多くの場合、立候補がなく、その場で抽選となる。自分は一度抽選で成人教育委員になったことがある。その年度に限らず、ほとんどの委員は抽選の結果で委員になった人が多かった。

今年も次年度の委員決めの時期になった。各家庭に手紙が配布される。

抽選で当たった場合でも引き受けることが難しい人はいる。その場合「出席の上で他のみなさんに承諾していただく」必要がある。しかし、大勢の前で言いたくないこともあるかもしれず、こういう場合の対応は難しい。
来年もPTA副会長を引き受ける旨、先日、教頭に連絡したので、私は対象外。
神奈川県の場合、以前は2年3学期のアチーブメントテストで進学先がほぼ決まるという制度が運用されていたため、2年の保護者はかなり大変な思いをしたことだろう。今はその制度がないため、3年の2学期後半から3学期が進学先決定などでもっとも忙しい時期。その時期に活動がある保護者はかなり大変な思いをしているのではないだろうか。
3年保護者に限定するのが適当ではないのでは、との意見を持っている人もいるようだ。
強制的にやっていただくという方法の不具合は見えてきているので、今後は選考ルールを変更する必要があるかもしれない。いっそのこと、立候補のみに限定し、最低限の数(たとえば3人)に達しない委員会は年度の活動はない、というようなことは無謀なのかな。
会社や役所ではなく、ここは学校なのだから、強制してまでやるべきことはあまり多くはないような気がする。

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2009/01/07

岩田規久男「景気ってなんだろう」

「リーマンショック」以降、本屋はアメリカ資本主義の問題点を検討する本が並んだが、そちら方面よりはなぜ景気が悪くなるのだろう?ということが知りたくて、たまたま山形浩生があるメルマガで推薦していたこの本を購入した。

専門用語があまり出てこないし議論を簡単にするため適切な省略がなされいて素人には助かる。たとえば、国内総生産については
国内総生産とは何かをきちんと説明することは簡単ではなく、大変、時間がかかります。そこで、不正確ですが、ここでは、とりあえず、国内で生産されたもの(厳密には、最終的に生産されたものです)の合計と考えておいてください。
と簡略化されている。が、翻って考えると「マスコミ」のレベルでは上記の簡略化されたものが正しいものとして扱われていることに気がつく。

景気が良い、とは、「売買が活発で、企業はもうかり、働く人の所得も増える、という経済状況」である。
景気の状況判断に上記の国内総生産(GDP)を使うのだが、この成長率(というか増加率)が、高度経済成長のころは平均で9%だったものが、「失われた10年」のころは1.3%、2002年から07年(景気拡張期間)ではわずか1.8%だった。
「景気が良い」と政府が言っていた割りには「失われた10年」と0.5%しか変わらなかったのなら実感がなくて当たり前だ。

ここ数年の「景気拡張」では企業の売上高経常利益率は順調に伸びたが、一方で実質賃金は下がっている時期がある。それまでの景気拡張では両者はほぼ同じように変化していたので、「今までとは違う」感じだったわけだ。その理由としては2つがあげられている。
  1. 今回の景気回復は海外の売上高の恩恵を受けた製造業が中心。これらの企業は対外直接投資(海外工場や買収)と設備投資を行うが、海外とのコスト競争が厳しく賃金を上げることができていない。
  2. 企業が人件費抑制の手段として非正規社員を増やす戦略を取っているため、熟練度の低い労働者の賃金が抑制されている。
企業勤務の身だとこの流れが加速されているのを感じる。非正規かどうかが問題であるのももちろんだが、経済成長がこの程度だと非正規社員の契約が不安定になるため、社会全体に悪影響があることが問題なのだ。

本書の最後では、景気を安定させる政策として、インフレターゲット政策が効くのかどうかをデータによって検討し、インフレターゲット政策を取っている国の経済が、そうした政策を取っていない国の経済(あるいは、それ以前の同じ国の経済)と比較して成長している、ことをデータにより示している。

景気浮揚策としての公共事業の効果が初年度が1.1から1.2、次年度以降はそれより低下するらしい。設備投資は条件がよければ、二倍から三倍の効果があることも紹介されている。ということから考えると公共事業の縮小は理屈から言えば正しい、ということになるが、問題は公共事業の代わりとなる(国内で設備投資したくなるような)政策がなかった、ということなんだろう。

ちくまプリマー新書なので、想定した読者は高校生や大学1,2年だと思うが、このレベルの理解が社会全体に行きわたっていればなあ、と思わなくもない。

アメリカの不景気が日本に影響があるかどうかも検討していて、結論からいうと、アメリカの直接の影響ばかりではなく、アメリカの不景気の影響でアジア各国が不景気になることの影響も受けるので、日本の景気も悪くなるだろうと予想している。

インフレターゲット政策の実証的な議論がここで書いてあるとおりなのであれば、経済成長を維持できており、このデータを見る限り「やってみてもよさそうな」政策に思える。日銀はそのような制約にとらわれずに、その時々の経済状況に応じて金融政策を運営する方が良い、という意見らしい。本書では特定の政策の正当性を主張してはいないが、実績では「リフレ」派が優勢ということだ。


2009/01/06

湯浅 誠「反貧困 -- 「すべり台社会」からの脱出」

NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの活動をどこかで読んだのはずいぶん前になる。そのときは、その活動の対象となる人や状況について具体的に想像できなかった。その後、エム・クルーグッドウィルなど日雇い派遣にまつわる報道などに接することがあってもそこと「もやい」に関連があると思っていなかった。

もやいの活動を行っている著者による貧困問題の解決のための「強い社会」づくりを広く訴える一冊。

貧困という問題は個人の「手持ちのお金が少ない」という現象で特徴づけられるのは当然だが、貧困が大量に生み出される「貧困問題」は社会の問題として対処するべきである。にもかかわらず、政策的には、貧困を生みだすしかけは作りだされる一方で3重のセーフティネット(雇用、社会保険、公的扶助)が充分に機能していないため、一度貧困状態になったら復活できない「すべり台社会」が現実のものとなっている。

2008年年末現在、世界的な不況の影響により派遣契約終了とともに寮を出なければならない人のために自治体が臨時職員として採用したり、公営住宅の空き部屋を融通したりしている。しかし、根本的な問題は、生活保護や失業保険などのセーフティネットを十分に活用できる仕組みを整備していないことではないのだろうか。

貧困から生活を再建するための仕組みが十分ではない上に、福祉事務所が生活保護申請を受け付けない「水際作戦」(北九州の「おにぎり食べたい」事件で有名になった)といった何重にも防衛線が引かれた行政の仕組みによって、社会から排除する仕組みはできており、機能している、という。しかも、厚生労働省は生活保護基準を切り下げようとしている。

残業代ゼロ法案(ホワイトカラー・エグゼンプション)にからんで、奥谷禮子氏の「自己責任」発言で
  1. 社員には(休むという)選択肢があった
  2. 社員は、あえてそれを選択しなかった(休まなかった)
  3. 本人が弱く、(ボクサーのような)自己管理ができていなかった
  4. それは本人の責任である
  5. 社会や企業・上司(もちろん経営者も含む)の責任を問うのはお門違いであり、社会が甘やかしているだけだ
という論理が展開されて、インターネットの掲示板などで批判を浴びたことが本書でも紹介されている。が、これと同じ論理は井戸端会議的な流れの中でよく繰り返されるものでもある。それに対して著者は
労働者が「休む」という選択肢を取るのは簡単ではないのに、誰でもいつでも休めたかのように言い繕い、過労死という死の責任を被用者に押し付け、使用者の自己責任を棚上げしている
ことに多くが気が付いたから批判を受けたのだ、という。そして貧困問題にも同じ構造があり、
実は、貧困状態にまで追い込まれた人に自己責任論を展開するのは、奥谷氏が過労死した人に自己責任を押し付けたのと同じである。貧困とは、選択肢が奪われていき、自己選択ができなくなる状態だからだ
と説明する。

「貧困問題がない」という立場から政治はいまだに脱することができていないと感じる。労働組合も「管理職以外の正社員」のみを対象とする活動が中心だったところから路線を変えることができたのだろうか。著者の言う「溜め」を社会全体が失いつつある、もしくは増やすことができていないようだ。著者が2008年の「私学のつどい」で、高校生ぐらいになったら、自分がもし貧乏になったときに生活保護など受給の権利があるしくみを学習させておくべきだ、という主張もこの「溜め」を作ることになるだろう。

追記:
2008年年末、著者らは東京都の日比谷公園にて、派遣契約終了などで失職した人たちを対象に「年越し派遣村」を運営していた。ここに集まった人たちを100人のオーダーで生活保護申請につなげることができた、とのこと。
また読売新聞の1月5日の報道によれば、自民党の坂本総務政務官が「自己責任」的な発言をされたとのこと。やはり見えない「溜め」を総務省の政治家の立場から見るのはむずかしいのだろうか。

坂本哲志総務政務官(自民、衆院当選2回)は5日、総務省の仕事始め式のあいさつで、東京・日比谷公園の「年越し派遣村」について、「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのかな、という気もした」と述べた。

追記2:
1月6日に上記発言を謝罪した(朝日新聞より)。

会見で坂本氏は「関係している多くの方々に不快な思いや迷惑をかけた。発言を撤回して深くおわびしたい」と頭を下げた。その上で「(集まったのが)500、600人の大人数だったので、それだけ雇用状態が深刻だとは思うが、そうではない人たちがいるのではないかと頭をよぎった。実態をよく把握しないまま発言した」と説明した。

また、学生運動を引き合いに、「『学内を開放しろ』『学長出てこい』、そういう戦略のようなものが垣間見える気がした」と発言したことについては「学生運動の時の手法と似ているという気もしたが、思い過ごしだった」と釈明した。

著者は本書で2008年第8回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)を受賞した。