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2014/01/31

福井 健策  「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか (光文社新書)

TPPの交渉対象項目であるにもかかわらず国内のニュースにはあまり出てこない知的財産権。
この本の最後にはインターネット上にリークしたアメリカの要求内容が収録されている。
韓国とアメリカのFTAではアメリカの要求(TPPの案と同じ)を韓国はそのまま受け入れ、かなり不利な状況になっているのだ、とか。

著作権保護期間の70年間への延長、著作権侵害の非親告罪化などこの本で取り上げられている項目のいくつかは、アメリカからの要求に応じて既に文化庁あたりで検討中。
また、最近、メロディーの商標登録を可能にする、というニュースがあった。これもリーク内容にあったもの。日本はアメリカの要求を「先取り」して導入し始めている。

一方で、アメリカで「使える」仕組みであるフェアユースは、アメリカの業界が日本に来て「日本には導入しないように要求」したそうだ。これは日本のインターネットサービスの開発を考えると導入しておくべきなのだが、あまり検討が進まない。

全体としてみると、この本の出版以降の状況は、アメリカの要求にかなり沿ったものになっているように見える。

本書では、そもそもどのようなルールが豊かなコンテンツを楽しむという目的に合致するのかと問題提起する。たとえば、非親告罪化すると二次創作の意欲を阻害することになる。現状の「ふるふわ」から、どのようにすれば、良質な二次創作・同人誌などを守り劣悪なものを減らすことができる制度になるのか、など。

著者は広い議論が必要、かつ、さまざまな試みをしてくべきと考えているようだ。だから、わかりやすい「回答」を示すことはしていない。さまざまな試みの一つとして、この著者も関係している同人マークがあるのだろう。たぶん、このマークは非親告罪に対応しているものだと思う。

TPPでは農業など政治的に保護したいものを日本は持っている。その身代わりに知財権を差し出すことになったらいろいろ困ることが多い。しかし、最近のニュースのTPP閣僚会合の大臣たちの顔を見ると農業が主要な議題だったりしていそう、と心配だ。