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2008/12/21

志賀内泰弘 「元気がでてくる「いい話」」

世の中にいい人はたくさんいるし、いい話もたくさんあるのだが、それを並べると説教臭くなってしまい、本を読んでいると「ちょっと、ここまではできないなあ」と思うことも。

この本にそういった「説教臭さ」を感じない。その理由はたぶん無理やり教訓を抽出しようとしていないところかもしれない。友人の会社(Wedding act Stagea)のblogに紹介され、著者についての話を聞いて興味を持ったのでこの本ともう一冊同じ著者の本を購入した。

この本で最も面白いと思ったのは、エピソードの方ではなく「あとがき」。この中で著者は「なぜ志賀内さんだけが『いい話』を見つけられたのだろう」との疑問に対して、次のように言っている。
  • 心の視線の角度を変えて見る
  • 「目の前の人やモノは変わらない」と理解すること
の2つを挙げる。相手が変わらないから自分を変えればいいのだ、と。推測だが著者はこれが言いたいことだったのでこれらのエピソードを選んだのではないか、と思う。

いろいろなエピソードの中で気に入った話をメモ代わりに記録しておく。今回、この本を読んだ時に気に入った話、ということで。

  1. 金メダリストの秘話 
  2. 一つ実らせるのに十年かかる

水無田気流 「黒山もこもこ、抜けたら荒野」デフレ世代の憂鬱と希望

現在の金融危機を発端とする不景気の10年ぐらい前に同じような状況の中で新卒就職を迎えた1970年代に生まれた世代の世界観はどうなっているのだろう。どの世代にも特有な社会や経済状況があり、それによって世界観も違う。「デフレ世代」に自らも属する著者は自分の世代の特徴を次のように言う。

一点だけ私たちの世代の長所をあげるとすれば、それは戦後日本の経済的転換(というか、私たちにとっては敗戦)ともいうべきこの事態を、個人史として身に刻み、かつその前後の時代や世代を相対的にながめられるということに集約される

ある状況に安住が許されない世代だからこそ「変化の激しい状況下、個人史の痛みとして社会をながめる者の数が相対的に多いのが、私たちの特徴ともいえる。」と。

文章のスタイルが常に軽いので、深刻な状況分析を読みながらも気持ちが暗くならない。たとえば、活字を読まなくなったことに触れて社会学者であると同時に詩人でもある著者はこう書いている。
私も、詩の分野で片山恭一や、綿矢りさや、金原ひとみみたいな書き手が現れて、現代詩ブームに火を付けてくれれば、そのスリップ・ストリームに入って、少しは私の詩集も売れるかもしれないわね、えへへ、などと思わなくもない。
地の文に口語体で自分の思いを混ぜるスタイルが全体のトーンを明るくしている。現代詩は本当に読まれていないらしいが。

著者の世代は、「自己責任」(懐かしい響きだが)を社会に出るところから強制され始めた最初の世代なのかもしれない。そう考えるとこの世代の社会学者が、最近、元気に発言しているということも納得できる。
自分の責任で決められる範囲ではないものを「選びたくない」は選べない状況の中で決定する人生の責任を個人の側に不当に押し付けているさまざま政策の矛盾は、一応安定を得た世代では感じないが、生涯賃金が他の世代よりも3~4%も低いと言われるこの世代では強く感じる、ということもあるのだろう。

この内容にこのタイトルをつけたことで少し損をしている(手に取らない人が増えている)ような気がして少し残念である。

2008/12/18

[MotoGP] 2009年 暫定エントリーリスト

MotoGP オフィシャルサイトに 2009年シーズンの 暫定エントリーリスト(provisional entry list)が掲載された。
MotoGPクラスに関してはこれまで情報がほぼそろっていたが、250cc以下はKTMの突然の撤退や125ccの小山知良選手の解雇などで日本人選手のシートがはっきりしていなかった。暫定ではあるが、今回ほぼ明確になった。

青山博一選手は、高橋裕紀選手がMotoGPに昇格して空席ができたスコットに所属予定。また,全日本250ccで2008年シーズンはランキング2位だった富沢祥也選手 がチームCIPから250ccに参戦する予定。二選手とも開発の止まったホンダのマシンに乗るので成績が出せるのかどうかやや心配だが、とにかくシートがこのまま確定してほしい。

クラス全体を見ると、125ccのチャンピオンのマイク・ディ・メリオの他、ガボール・タルマクシ、ラファエル・デローサ、スティービー・ボンシーなどが昇格する一方で、250ccのチャンピオン マルコ・シモンチェリも残留しているので、上位を狙えるメンバーが多い。

250ccクラス
4. 青山博一, SCOT RACING TEAM 250cc
7. AXEL PONS, PEPE WORLD PONS WRB
8. BASTIEN CHESAUX, RACING TEAM GERMANY
9. TONI WIRSING, RACING TEAM GERMANY
10. IMRE TOTH, TEAM TOTH APRILIA
12. THOMAS LUTHI, EMMI - CAFFE LATTE
14. RATTHAPARK WILAIROT, THAI HONDA PTT SAG
15. ROBERTO LOCATELLI, METIS GILERA
16. JULES CLUZEL, MATTEONI RACING
17. KAREL ABRAHAM, CARDION AB MOTORACING
19. ALVARO BAUTISTA, MAPFRE ASPAR TEAM
21. HECTOR BARBERA, PEPE WORLD PONS WRB
25. ALEX BALDOLINI, WTR SAN MARINO TEAM
28. GABOR TALMACSI, BALATON RACING TEAM 250cc
35. RAFFAELE DE ROSA, SCOT RACING TEAM 250cc
41. ALEIX ESPARGARO, CAMPETELLA RACING
48. 富沢祥也, TEAM CIP
51. STEVIE BONSEY, APRILIA MADRID
52. LUKAS PESEK, AUTO KELLY - CP
58. MARCO SIMONCELLI, METIS GILERA
63. MIKE DI MEGLIO, MAPFRE ASPAR TEAM 250cc
75. MATTIA PASINI, TEAM TOTH APRILIA

125ccでは、昨年、日本グランプリ終了後に突然解雇された小山知良選手が中国メーカーLONCINに移籍、中上貴晶選手は昨年と同じチームで参戦する予定。
上位選手ではディメリオが250ccに昇格したが、ランキング2位のシモーネ・コルシは残留。

125cc
5. ALEXIS MASBOU, LONCIN RACING
7. DOMINIQUE AEGERTER, AJO INTERWETTEN
8. LORENZO ZANETTI, WWC
11. SANDRO CORTESE, AJO INTERWETTEN
12. ESTEVE RABAT, BLUSENS APRILIA
16. CAMERON BEAUBIER, RED BULL KTM 125
17. STEFAN BRADL, KIEFER RACING
18. NICOLAS TEROL, JACK & JONES PONS WRB
24. SIMONE CORSI, JACK & JONES PONS WRB
27. STEFANO BIANCO, CBC CORSE
29. ANDREA IANNONE, WWC
30. PERE TUTUSAUS, MATTEONI RACING
32. LORENZO SAVADORI,FONTANA RACING
33. SERGIO GADEA, BANCAJA ASPAR TEAM 125cc
34. RANDY KRUMMENACHER, DEGRAAF GRAND PRIX
38. BRADLEY SMITH, BANCAJA ASPAR TEAM 125cc
44. POL ESPARGARO, BELSON DERBI
45. SCOTT REDDING, BLUSENS APRILIA
60. JULIAN SIMON, BANCAJA ASPAR TEAM 125cc
66. MATTHEW HOYLE, MAXTRA TEAM
71. 小山知良, LONCIN RACING
72. MARCO RAVAIOLI, CBC CORSE
73. 中上貴晶, WWC
81. JASPER IWEMA, KIEFER RACING
88. MICHAEL RANSEDER, MAXTRA TEAM
93. MARC MARQUEZ, RED BULL KTM 125
94. JONAS FOLGER, WWC
99. DANNY WEBB, DEGRAAF GRAND PRIX

2009は世界同時不況の影響がどうなるのか、という心配を常にしつつレースを見ることになりそう。
日本人選手の中では、2年目の中上選手、初参戦の富沢選手の二人は全日本125ccでのライバル。また、青山選手と高橋選手が同じチームの別クラスに所属することになる。

メモ代わりにMotoGPクラスも(冬季テストどおりだが)貼っておく。中野真矢選手がいないのがさびしいが、高橋裕紀選手が250ccから昇格した。それと、セテ・ジベルノーが復帰。また、2009年からはブリジストンのワンメイクタイヤになる変更も実施される。

3. DANI PEDROSA, REPSOL HONDA TEAM
4. ANDREA DOVIZIOSO, REPSOL HONDA TEAM
5. COLIN EDWARDS, TECH 3 YAMAHA
7. CHRIS VERMEULEN, RIZLA SUZUKI MOTOGP
14. RANDY DE PUNIET, LCR HONDA MOTOGP
15. ALEX DE ANGELIS, SAN CARLO HONDA GRESINI
21. JOHN HOPKINS, KAWASAKI RACING TEAM
24. TONI ELIAS, SAN CARLO HONDA GRESINI
27. CASEY STONER, DUCATI MARLBORO TEAM
33. MARCO MELANDRI, KAWASAKI RACING TEAM
36. MIKA KALLIO, PRAMAC RACING
46. VALENTINO ROSSI, FIAT YAMAHA TEAM
52. JAMES TOSELAND, TECH 3 YAMAHA
59. SETE GIBERNAU, GRUPO FRANCISCO HERNANDO
65. LORIS CAPIROSSI, RIZLA SUZUKI MOTOGP
69. NICKY HAYDEN, DUCATI MARLBORO TEAM
72. 高橋裕紀, SCOT RACING TEAM MOTOGP
88. NICCOLO CANEPA, PRAMAC RACING
99. JORGE LORENZO, FIAT YAMAHA TEAM

2008 MotoGP 年間総集編 [DVD]
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2008/12/12

高橋克徳 ほか 「不機嫌な職場」

この本に取り上げられている会社は、グーグル、サイバーエージェント、ヨリタ歯科医院。これらの企業はこの後、日経BPなど他のメディアでも同じように取り上げられている。

理論的に現象を理解し改善案を実行に移したとしても失敗する企業も数多くあるに違いない。上記の企業に代表される数少ない成功例を目標にすることは他の企業に取っては、かなり危険を伴うのではないかという気さえする。

社員が楽しく働ける職場を作るための簡単な処方箋のようなマニュアルがあるわけではない。著者たちは、この本の中で、状況を理解し、共有し、協力して、「新たな協力社会」を構築して行って欲しいと述べている。

あとがきに
組織のための個人でも、個人のための組織でもない、個人と組織がともに支え合い、良い影響を与えあう、新たな協力関係を作り出していくことが必要なのだ。(中略)
将来の子供たちのために、私たちは一人ひとりが輝いた人生を送ることを支援し合える新たな協力社会への扉を開けなければならない。そんな使命感を多くの人たちが共有し、一人ひとりが一歩踏み出していけば、これからの日本社会に私たちはもっと誇りを持てるようになるのではないだろうか。
とある。

現状、ITの問題はITでとばかりに、社内SNSや社内blogなど、発信を積極的に行う仕組みをいれてコミュニケーションの問題を解決しようというビジネスがらみの流れが強くなっている。しかし、根本的な問題は一企業の中で閉じたものではない。だから、人間の協力という行動それ自体を意識的に強化していかなければならない、というのが、この本の重要なメッセージだ。

高橋克徳、河合太介、永田稔、渡部幹の4氏による共著。
不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)
河合 太介

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2008/12/10

[NASCAR] 2008 第36戦 ホームステッド

NASCAR 第36戦 フロリダ州ホームステッド マイアミスピードウェイ (Homestead Miami speedway)

解説は石見周氏。

ジミー・ジョンソン (Jimmie Johnson)の3連覇がかかっている。2位のカール・エドワーズ (Carl Edwards)との間には141ポイント差があるので、36位以内でフィニッシュすればシリーズチャンピオンを獲得できる。エドワーズが逆転優勝するには、ジョンソンが最下位(43位)かつエドワーズが2位以上になることが条件。

このレースはトニー・スチュアート(Tony Stewart)にとっても記念のレース。10年在籍したジョー・ギブズ レーシング (Joe Gibbs Racing)を離れ、来季からは自分が共同オーナーとなるスチュアート・ハース・レーシングに移籍する。JGRでは2回のチャンピオンを獲得した。インタビューではちょっと涙声である。各クルーとハグしてから車に乗り込む。「優勝旗をボンネットに飾って終わりたい。」

エドワーズは前日のNationwideでレースには優勝したがシリーズでは2位となり、クリント・ボーヤー(Clint Bowyer)にチャンピオンを攫われた。

今回の国家はNe-Yoが歌う。あたりまえだがうまい。

スタート順はエドワーズ4番グリッド、ジョンソン30番グリッド。

サーキットは1.5マイル。バリアブル・バンキングシステムでイン側が18度、アウト側が20度。ピットウィンドウは50から55周。石見氏によれば燃費は1.7から1.8キロ/リッター。

フロントローはデビッド・ルーティマン(David Reutimann)とスピード。レッドブルチームはオーナーズポイントを取得するためにブライアン・ビッカーズ (Brian Vickers)を84号車、スコット・スピード (Scott Speed)を83号車に乗せ換えている。ビッカーズにポイント取得を託する。これが裏目に出て83号車の方が速くフロントローに来ている。オーナーズポイント順で35位までに入ると初戦から5戦までの決勝進出が保証されるという特典がある。

オーナーズポイント順は
33 Gene Haas 66号車
34 Robby Gordon 7
35 Redbullチーム 84
36 Rob Kaufmann 47
37 Gorge Gillete Jr. 10

Redbullは当落線上にいる。

フォードのフュージョンのハイブリッドカーがパレードラップを先導している。2010年発売予定の車のお披露目。
スタート直後からマット・ケンゼス (Matt Kenseth)がトップ。19周あたりでエドワーズがトップに入れ替わる。ケンゼスとエドワーズが同じチーム(ラウシュ)だが譲った雰囲気ではない。ジョンソンは18位まで上昇。

TVに映ったピットでは、ナットを回すエアドライバーに潤滑剤をスプレーしたり、タイヤの空気圧の調整やピットウォールの隙間にコードが挟まらないようにガムテープでふさいでいる。

序盤はコーションがなく、52周でジョンソン、エドワーズがピットイン。ケンゼスが自分のピットを見落とすミスで順位が下がる。 大きなクラッシュもなく折り返しまで経過し、上位の順位はエドワーズ、デビッド・レーガン(David Ragan) 、リューティマン。

126周あたりからのアンダーグリーンピットではビッカーズがピット速度違反でドライブスルーペナルティ。オーナーズポイントを得るには上位が必要なのだが、大丈夫か?
このとき、エドワーズが1位、ジョンソンは9位。ピットイン後に15周でイエローが発生したときにもジョンソンは4タイヤ交換。保守的な作戦だ。

デイル・アーンハート インク(Dale Earnhardt Inc.)チップガナッシ レーシング (Chip Ganassi Racing)は合併が発表された。車がダッジからシェヴィに変わる。フアン・パブロ・モントーヤ (Juan Pablo Montoya)はこのチームに所属することになる。「2009年シーズンは活躍できそう」石見氏。

残り周回が少なくなったところでジョンソンが一度2タイヤ交換のギャンブルでトップを奪う。これは5ポイントを取る作戦か。このあとは無理せず徐々に後退した。
最後の20周ぐらいのアンダーグリーンピットをエドワーズは燃費走行でステイアウトし、そのリードを保って優勝。ジョンソンは2タイヤで20位に復帰し追い上げて15位。スチュアートは上位を走る場面もあったがフィニッシュは9位。

レース順位は、エドワーズ、ケビン・ハービック (Kevin Harvick)ジェイミー・マクマーレイ (Jamie McMurray)

ジョンソンは3年連続のシリーズチャンピオンをクルーチーフのチャド・カナウス (Chad Knaus)とともに獲得。ドライバーで3年連続は2人目だが、同じ組み合わせでクルーチーフも3年連続はカナウスが初めて。

2008/12/01

[DTM] 2008 第11戦 ホッケンハイム

ドイツツーリングマスターズ選手権 第11戦 ホッケンハイム (Hockenheimring)

"ミスター・DTM "ベルント・シュナイダーの引退レース。グランドスタンドには DANKE BERNDの文字が。

アウディのティモ・シャイダーとメルセデスのポール・ディレスタがシリーズポイントで2ポイント差での最終戦。このレースで勝てばシリーズチャンピオンも獲得できる。グリッドはマティアス・エクストローム、ディレスタ、シャイダーの順。

ディレスタはトラクションがかからずスタートでシャイダーがトップへ。ブルーノ・スペングラーとマーティン・トムツェックが、後方の5,6位あたりで小競り合い中。トムツェックがはじき出されてコースアウトし後退。
アルバースが後方でスピン。コース上で回ったのでそこにマルクス・ヴィンケルホック、マティアス・ラウダ、スージー・ストダードが突っ込んでフロントカウルを壊してリタイア。

スペングラー、シャイダーは早めのピットを1度済ませる。ピットアウトの後のスペングラーはパラボリカコーナーで後続を3ワイドで抜いていく。ディレスタはピットインを遅らせて引っ張る作戦。しかし、ディレスタのピットワークがあまり早くなく、ピットアウト後にシャイダーとの差は広がった。順位は5位、6位。

2回目のピット後もシャイダー、ディレスタの差はそのまま。最終ラップでの両者の差は3.2秒。順位は1位と2位。そのままフィニッシュで、シリーズチャンピオンはシャイダーに決定。ディレスタは序盤にエクストロームと接触があったらしくその影響で車のバランスが崩れてペースが上がらなかったようだ。

最終戦だったのでホッケンハイムのストレートのチェッカーと同時に大量の花火がコースサイドで打ち上げられた。