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2009/01/17

岸良裕司「マネジメント改革の工程表」

「工程表」という言葉そのものが、急速に(「小泉改革」と同様に)手垢にまみれた印象があり、その点では題名でこの本はかなり損をしていると言える。

プロジェクトが失敗すると進捗報告などの仕掛けを多く入れることになり、間接工数が増えることで、さらにプロジェクト失敗のリスクが高まる、という負のサイクルが回ることになりがちだ。

プロジェクトにおいてサバを読むという行為を外部化して、プロジェクト共通の「余裕」(親方バッファ)としてリソースとみなし、そのかわりにスケジュールは「できるかできないか」ぎりぎりに設定する。「あと何日」というシンプルだが強力な時間管理することでプロジェクト参加者の意識を将来に向けてそろえる。クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント(CCPM)という手法がこの本の中心である。

プロジェクトの最初の段階で、目標(Objective)、成果物(Deliverables)、成功基準(Success Criteria)の3つを「全員で議論」し共有する。さらにタスクを定義して後ろからスケジューリングすることを「科学的段取り八分」と呼ぶ。「段取り八分」という日本の会社でよく聞いた言葉がこの文脈で再生されている。
  • 目標が社会通念に外れないか
  • 経営目標と合致しているか
などを満たすプロジェクトの大義名分があるか、がメンバーのやる気を向上させる、らしい。

全体を通して感じるのは、個々の技術や方法論は成功率の高いプロジェクトマネジャーはすでに身に付けているだろう、ということだ。乱暴な言い方をすれば、そのような手法を再構築し、わかりやすく体系化したにすぎない、とも言える。実は、従来は上司から部下へと暗黙知として伝達されていたものかもしれない。

本書の内容を通底するのはCCPMという手法を入れることによってプロジェクトに関係する人たちのコミュニケーションが改善できる、という主張である。このあたりは最近読んだ「不機嫌な職場」にも通じるものがある。

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