この書き出しを読むと、政治家が役所が、、、という「体制に風穴を開ける」話かと身構えてしまうが、実用的な調査と発表についてのノウハウをまとめた本だった。
実地調査に慣れている著者は、文献、統計、役所の発表、インターネットなど、すでに何らかの形でまとめられているものの調べ方だけではなく、キーパーソンにあう、インタビューをするなど、フィールドワークについても経験を生かして方法論をまとめている。
最後には、市民による調査の連帯やノウハウの交換、団体による助成など、実のある調査をするために使えるものは何かまで言及している。
環境社会学が専門ということもあって、最初の方で、少し調べればというのがなかなかできないことの例として以下のようなくだりがある。
しかし、この本では、調査はそんなに難しくない、ということを主張します。少なくとも、「熱帯林を守るために紙の使用を減らそう」というのが間違いかどうかくらいは、簡単な調査でわかる、ということを示したいと思います。調べようという意思と、少しのノウハウがあれば、これくらいのことは簡単に調べられるのです。これに限らず、章ごとに「練習問題」があり、これに沿って「少しやってみる」ことができるようになっている。
たとえば
【練習問題】定年が近づいてきたので(それまで会社があるかという問題もあるが)、その後の人生は少ない年金を使いながら社会に貢献したいと思っている。会社というしがらみがなくなったら何をしたいのか?地域の問題を細かく調査し提言したい、という妄想に近い野望もあってこの本を手に取った。
官庁統計から、以下のことを調べよ。
(1) 日本の1世帯当たり年間外食支出はどのくらいか?
入門者の練習本としても役に立つ。