ページ

2014/02/13

水無田気流 「無頼化する女たち」

無頼化とは、
社会的に自立している
文化的規範から逸脱している
という2つの要素を持つ。

日本の男性中心社会(旧来の規範)とぶつかりながら自立していくという成功物語ではなく、表と裏のコードがある中で女性は無頼化せざるを得ない。

裏コード(育児の負担など)がどんどん巧妙に隠されるようになってはいるが、表コード(雇用機会の均等)との矛盾が解消されたわけではないから、女性の状況は厳しくなっている。何度か繰り返し書かれているのは、女性の主張として流行するものが「負け組」への視点を欠いているということ。
たとえば、「負け犬の遠吠え」は、「勝ち組負け犬」であるし、「おひとりさま」の老後はある程度の財産を持ちゆとりを得た人に当てはまる話だ。いずれも低所得層にはあてはまらない。

この本によると、育児の理想的な方法が、日本だけではなく各国で多少保守的だそうだ。日本の場合、育児や女性の家庭での役割といったことになるとかなり保守的な傾向になる。そのことと、女性の社会進出だとか、最近言われる女性の取締役を増やす、など、建前の部分の話は大きく矛盾している。

育児に関して言えば、理想像が現代の基準で見るとあまりに保守的であり、専業主婦前提のスケジュール作りがなされているため、育児そのものの大変さと検診など行政の都合に合わせるための調整がそこに加わる。

社会の矛盾が社会的に弱い女性の状況を通して露呈している、ということだろう。

「普通にしていたら子供は産めない」社会は変わっているのか?表の話(ワークライフバランス、イクメン、女性管理職増加、待機児童減少)ばかりが先行しているように見える。この本の流れでいえば、「負け組」の状況は改善していないどころか悪くなっているのではないだろうか。

追記。
西森路代との対談「女子の国の歩き方」と書き下ろしを120ページにわたって新規収録した『無頼化した女たち』(亜紀書房)が2014年2月に刊行。

0 件のコメント:

コメントを投稿