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2014/09/15

水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子 「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」

三人がそれぞれにプロダクションの社長だったり、フリーな立場で作品のコラボレーションを企画制作している。 企業の二代目が先代をついで社長になる、や、スポーツ選手のこどもが親と似たような競技生活に入る、というのとは違う「まんが家の娘が親の作品に仕事としてかかわる」とは本人にとってどういうことなのか、というところが面白い。 手塚るみ子  手塚プロとは独立な立場でコラボレーション作品制作など。 水木悦子  いわば自然な流れで水木プロへ。 赤塚りえ子  急遽、帰国して社長に。 それぞれの家庭は親であり作家でもある父親の仕事環境の影響を大きく受けている。多くの子どもが経験する親からの独立という課題に、偉大なまんが家である親との距離のとり方というややこしい問題がプラスされていて、本人は苦労があったのだろうなあ。手塚真が父親を「手塚治虫」としてみていた、らしい。
手塚 どこの家庭でも同じようなことはあると思うんですよね。父親が先に死んだとき、子供は父親が残したものを持って自分の道を歩いていかなくちゃいけない。あの毛皮は父の遺した遺産なんですよ。
この「毛皮」とは「ジャングル大帝」に出てくるエピソード。 「ジャングル大帝」に限らずアニメのイメージが強く、どの作品も完全版をまんがで読み通したことはない。 本の中で、三人が親の作品を読んでほしいと強く思っているのは、そういうことなんだろう。 この本は自分にとっては、それぞれのまんが家の作品に興味を持つ導線としても読める。三人がそれぞれ選んだ短編も所収。どれも読んだことがなく、「こんな作品も書いていたのか」という驚きがあった。

2014/07/13

小熊英二「社会を変えるには」

社会を変えることに役に立つ基礎教養、と著者がおわりにに書いているとおり、直接民主制や哲人王などまでさかのぼって、そもそも民主制とは何なのかまでを考える材料を提供している。

社会の見方の一つを提示しているに過ぎないという立ち位置ではあるが、日本にかぎらず「自由」になることで代議制のための「われわれ」がなくなってしまった、というのが基本的な姿勢。同じく自由が増えたことで立場が固定化されなくなった。そのため、カテゴリー分けをして対応するのがうまく機能しない。ここから、お互いが話をして「作り作られる」関係に移行していくだろう、という。

最近まで、なんとか回っていた日本社会の構造は、実はたまたまこの数十年うまく「はまっていた」に過ぎないんだなあ、と。

役所が進める介護や認知症の負担を「地域に」という話。これなんかも負担コストを払う側が参加していないから、うまくいかないんじゃないか、などとも考えた。

最初と最後が現代日本の話、中間は歴史や思想を概観した教科書のようなつくりになっている。

思想や日本史の近代はまとめて読むことはほとんどなかったので、面白かった。


2014/07/07

ダイヤモンド・オンライン 小川 たまか 「やめたいのに抜け出せない」と親たちの悲鳴が噴出

ダイヤモンド・オンラインにPTAの記事が出るのは珍しい。特別なニュースがあったわけでもないので著者の選択によるのだろう。
片働きが減り、共働きが増えるにつれてダイヤモンド・オンライン読者にもPTAが身近なものとなっている、との想定で書かれたのかもしれない。

PTAという組織の問題点として
  • 活動内容がよくわからない
  • PTA会長の仕事内容がわからない
  • 男女差
  • 仕組みを変えたくても変えられない
 が挙げられ、取材から上がってきたPTA会員(保護者)のコメントが紹介されている。タイトルは「悲鳴が噴出」とセンセーショナルだが内容は冷静なもの。

PTA参加にはメリットもあると指摘し、その上で、PTA本来の目的として
PTAのそもそもの目的は、保護者と学校、さらに地域が連携して子どもの成長を見守ることだ。核家族化が進み、地域との連携が薄れていると言われる時代。 学校・地域と連携を取ることの大切さを、それぞれの保護者が身をもって実感し、意識することからPTAの改革が始まるのかもしれない。
として、

あなたが参加するPTAは、果たして変わることができるだろうか。
と結んでいる。

会則を変えるのが難しいこと、新しい手法の導入に消極的な抵抗が多いことなど「PTAあるある」が盛り込まれていて参加経験のある人は同意できるものが多い。

自分のような本部経験者が見ると、「強制加入」を前提とした記事になっているところが問題点だと感じる。多くのPTAがまだ「強制加入」であり読者のほとんどが有無を言わせず会員になっている現実を見るとしょうがないのかな。

おそらく(推測だが)、ここまで取材されているのであれば著者は強制加入の問題はご存知のはず。ほとんど話題にならないPTAの記事を掲載するという条件下で今回の掲載になじむかどうか検討された上で、見送ったのではないか。

「やめたいのに抜け出せない」と親たちの悲鳴が噴出 今どきのPTAはなぜかくも厄介で憂鬱になったのか?