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2008/02/02

河村幹夫「五十歳からの危機管理」

近所のブックオフの新書コーナーに別の本(「生物と無生物の間」)が出ていないかと探しに行って目に止まった本。目的の本はなかったのでかわりに買ってきた。著者の河村幹夫氏の著書は以前に一度読んだ記憶があった。題名は覚えていないが、確か、サラリーマン生活に関する本だったと思う。

そろそろ自分の年齢に近くなったこともあって、定年や老後というテーマの本が気になる年になってきた。

副題に「健康・財産・家族の守り方」とあるとおり、老後の生活に何千万必要であるからすぐに投資せよ、といった類の煽りは全くない。著者は五十歳にかぎらないが定年を間近に迎えた世代に対して主にリスクマネジメントを中心に据え、自らの経験を引きつつ助言をする、という内容。

海外赴任経験もある商社マンから大学教員に転職しているという経歴のためか、長期的・国際的な観点での記述も多い。特に、心にひっかかった一節を以下に引用する。

残念だが現在の私には、経済は中規模であっても、国家には品格があり、国民は品性を保ち、凛としたプライドと自信を持って、胸を張って生きている、そんな10年後の「この国の姿」を頭の中に描き出すことは、できない。
その理由は多々あるが、重要なことを一つだけあげれば、それは「教育の劣化」である。何も今始まったことではないが、能力面でも精神面でも何一つ本質的なものを与えることなく、ただ役人の書く朝令暮改的な方針の表面的な執行だけでは、日本国民としての筋金のはいった、世界で尊敬される人物をシステム的に世に送り出すことはますます不可能だからである。
むしろ私の頭に浮かぶのは、静かな10年後の日本である。ここでの静かというのはけっして静謐(世の中が穏やかに治まっている)ではなく、むしろ頽廃の危険を秘めた無気力な静態である。高齢者に元気がない、若者に元気がない、それでいて、他人よりもすこしでも恵まれた状態にいたい、他人よりすこしでも多くマネーを持っていたい、他人より少しでも安全でいたい。そんな人ばかりになったら、国家として成立しているだろうか。また諸外国からの圧力に勝てるだろうか。
(中略)
答えは誰にでもわかっているはずなのだが、決断と実行を一日のばしにしている。そういう国と国民に、よりよき明日はあるだろうか。


私は団塊の世代の直後の世代。自分の定年のときには定年後老人が世間にあふれている状況を想定しているが、そのとき、その老人たちはどのように暮らしているのだろうか、というイメージは全くもてないでいた。この本を読んで、そちらばかりに気を取られているのではだめだ。自分なりのこの先の十年(あるいは二十年)のイメージを明確に持ち、リスクにも備えることが大切なのだ、と思い直した。改めて書いてみれば何一つ特別なことではないのだが、日々の生活で手一杯な自分にはこういった本を読み「先達」の言葉を聞くことも必要なこと。特にこの年代の知り合いが近くにいて意見を交換できる環境を持っていないからなおさらだ。
五〇歳からの危機管理―健康・財産・家族の守り方 (角川oneテーマ21)五〇歳からの危機管理―健康・財産・家族の守り方 (角川oneテーマ21)
河村 幹夫

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2 件のコメント:

  1. こんにちは!
    先日はPTAのキーワードで、ブログに来てくださってありがとうございます。

    今、私は小学生の子どもを育てているのですが、
    10年後というと、子ども達がそろそろ社会に出ていこうとする頃になります。
    遠いようですぐの未来なんですよね。
    そして、私は一人っ子なのですが、
    両親と祖母がまだ顕在です。
    10年後には両親と、もしかしたら祖母の世話を私ひとりですることになるかもしれません。
    真面目な両親ですので、経済的な援助は必要ないと思いますが、
    日々の生活においての手助けは必要だと思います。

    あっという間に10年経つわけじゃないので、
    だんだんとそうなっていくのですが、
    だからこそ、今の毎日が大切なのですよね。

    私も今の生活でいっぱいなところもありますが、
    少しは未来を見据えて頑張ろうと思います。

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  2. kyonpiさん
    コメントありがとうございます。

    小学生からの10年は親として一番面白くて大変な時期だと思います。うちはちょうど半分ぐらいが終わったところでしょうか。

    私もそろそろ親のことが気になる年です。kyonpiさんのように一人っ子でご両親やお祖母様までのお世話をされる方もこれから増えてくると思います。一方で介護制度が必ずしも使いやすいものになっていないなど、これからもっと世の中をよくしていく必要はあると思います。
    PTA活動も間接的ですがそういう役に立てればと思いつつ頑張っていくつもりです。

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