ページ

2008/02/25

斎藤正彦「親の「ぼけ」に気づいたら」

老親の介護をする予備軍としての準備が全くと言っていいほどできていない。
二人とも元気だと言っても、年も年なのでいつまでも二人だけでやって行けるとは限らない。
そう思ってbooxから購入した一冊。

著者の斎藤正彦は高齢者の精神医療、司法精神医学が専門の医者。文章がうまくて、一気に読めてしまう。内容は著者の患者の何人かを合成した人物の「痴呆」(認知症は学術用語として認知されていないし一般にもなじみがないとして本書では「痴呆」を使っている)の発症から死亡するまでの経過を「物語」として追いながら「解説」を加える形式。所々には、主治医としてかかわった他の患者のエピソードが織り込まれている。

様々なケースを医者の筆から知ることができるばかりでなく、避けて通れない問題である介護に対する考え方や施設についても解説されている。今のところ決して治療できない病を得た家族がどのようにして人生の最後を豊かに過ごすのか、また、介護する家族の人生も豊かであり得るのか。
  1. 介護は<痴呆老人>という種類の人々に対する一方的なお世話ではなく、不運にも痴呆性疾患という病気になったかけがえのない個人の援助であること。
  2. 客観的な知識を冷静な観察があれば科学的な介護ができるということ。
というポイントは一貫して本書を流れている考えである。よく言われることだが、デイサービスなどをうまく利用することで介護される側の症状もいい状態になることが本書でも書かれている。自分がその立場になると難しいことだと思う。

あとがきより一部引用する。

最後に、介護のこつを一つ伝授しましょう。それは、介護者が幸福であるかを常に自問することです。自分が幸せでない人に、他人を幸福にすることはできません。痴呆症状を抱えて幸福になるのは大変です。誰かの助けが必要です。自分に余裕が無いのに、溺れる人を助けようとすれば、助けを求めた人と一緒におぼれてしまいます。無理は絶対禁物です。


その場になってあわてて読むのではなく、まだ自分の心に余裕があるうちに読めてよかったと思える一冊。ただし、この本にもかかれているとおり、情報集めは早めにやっておく必要がある。また、本人に告知しておくことで症状が進んだ時の後見人制度などの利用もスムーズに行くことが強調されている。これは病院や主治医にもよるかもしれないが大きなポイントだろう。

親の「ぼけ」に気づいたら (文春新書)親の「ぼけ」に気づいたら (文春新書)
斎藤 正彦

文藝春秋 2005-01
売り上げランキング : 46312

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

0 件のコメント:

コメントを投稿