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2011/02/26

ヒラリー・ウォー 「この町の誰かが」

これは電書部で入手した対談集でタイトルが言及されていたヒラリー・ウォーの作品の一冊。まず「ながい眠り」を読んでなかなか面白かったので、同じ作者のもう一冊のおすすめを読んでみた。


郊外の住宅街で女子高校生がレイプ殺人の被害にあった。

この殺人事件を街の警察署長が調査する、という舞台設定はなんとなく「ながい眠り」にも似ている。
捜査の進展がはかばかしくないところも似ているのだが、この話の方が「読み出したら止まらない」

捜査は進展しないのに住民が抱えている秘密や、普段は意識していない偏見が、どんどん掘り起こされる。
犯人探しの進展もさることながら、住人の間の反目や人種差別、精神病患者らしき人への差別、ゲイへの偏見など建前としては存在しないものが殺人事件というきっかけでどんどん表に出てくる。

アメリカのサバービアの無表情な平穏さがまやかしだ、と言っているかのうようなストーリー。

電書部で購入した「サバービアとミステリ 郊外/都市/犯罪の文学」川出正樹、霜月蒼、杉江松恋、米光一成 には以下のような仮説が提示されていた。
【仮説3:サバービアなもの、郊外を舞台にしたミステリの嚆矢はヒラリー・ウォーである】ということだと思う。

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