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2012/08/17

阿部彩 「子どもの貧困」 -- 日本の不公平を考える

日本政府が計測していない貧困に関するデータを実際に測定し、それをもとに話をしているのであいまいなところが少ない本だ。

かなり前、橋下大阪府知事(当時)が、私立高校への補助を全廃するという案を実行しようとしたことがあった。今、大阪の私立中高の保護者会のウェブサイトを見ると助成金は存在はしているようだ。

さて、このとき助成金の運動をしている保護者が私立に通っている母子家庭の女子生徒の話をしてくれた。それがこの本にある状況と似ていて、女子生徒自身は賄いつきの夜のアルバイトで食費を節約する一方で保護者は体を壊して夜の仕事やめて家にいるようになったので、運動の手伝いができるようになった、というエピソードだった。その後、橋下知事がガチで女子高生を言い負かして泣かせるなどというあきれた出来事まで報道されていたころのことだ。

この本を読むと、母子家庭は貧困率が非常に高い、しかし、生活保護にかかる率が1割程度であるなどで、母親は低賃金で働かざるを得ない。そのため、仕事を複数掛け持ちするので無理して体を壊し、貧困状態が余計にひどくなる、というスパイラル。

子どもの貧困が父子家庭で起こっていると、母子家庭と待遇が異なるなど、子どもを対象としていない政策が多いとのこと。

どうも日本人は子どもの待遇は少々悪くてもちゃんと育つという思い込みがあるようで、半数以上の人が「これは必要でしょ」と思うものがほかの国の人と比べると少ないらしい。日本では
  • 朝ごはん
  • 医者に行く(健診も含む)
  • 歯医者に行く(同上)
  • 遠足や修学旅行など学校行事への参加
  • 学校での給食
  • 手作りの夕食
  • (希望すれば)高校・専門学校への進学
  • 絵本や子供用の本
の8項目のみが市民の支持が得られた項目だった。では、半数が支持しない項目はなんだったかというと、たとえば、「お古ではない洋服」「おもちゃ」「誕生日のお祝い」などは半数に満たなかった。イギリスだとそのようなものも半数以上の市民が「子供に絶対に必要」と考えている。

見た感じでは日本人は「学校さえいければいいだろう」という考えが強く、お金がなくても学校に行って自分で努力していい暮らしにむすびつければいい、と考えているのかもしれない。

実際には、公立中学校で塾に行かない子がほとんどいない状況では、ある程度経済的な余裕がないと高校もレベルの低いところに進んでその後はなんとか就職できれば、ということになりはしないか。

現在の公立中学校には塾の代わりをになうための余力はない。だから、貧困世帯には、塾に通うための資金を補助してもいいのではないかと思う。

母親へのアンケートが本書にはいくつも掲載されているのだが、胸が詰まる内容が多かった。
こども手当が腰砕けになった現状、子どもの貧困は政策対応があるのかどうか心配になる。


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