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2008/03/07

烏賀陽弘道「Jポップとは何か」

ふとインターネット書店でクリックしてしまった。岩波新書を読むのはかなり久し振りではないだろうか。

著者の烏賀陽弘道は朝日新聞勤務の後、フリーになっている。その後、サイゾーという雑誌にコメントした内容をめぐってオリコンから損害賠償の訴えを起こされている。その裁判の判決は2008年の6月ごろに出る予定。

Jポップの誕生、タイアップやカラオケボックスをテコにした音楽産業の巨大化、全国渋谷化から、CDからオンライン配信への移行などが漏れることがなくカバーされている。単にJポップだけにとどまらない日本の音楽産業について広くカバーした力作だ。

今まで何の気なしに聞いていたJポップというジャンルが、J-WAVEを一つの発信源として始まったというのは新しい発見であったが、思い返すと心当たりもある。J-WAVEの日曜日に放送されるTOKYO HOT 100では最初のころは日本の楽曲はランキングに入ったことがなかった。今はJ-WAVEもやや普通なFM放送になっており、日本語の曲がたくさんかかるし、おしゃべりの時間が長い。そこにも音楽産業の形の変化を感じることができる。

本書を最後まで読むと、レコード会社と音楽産業(筆者の言葉では「Jポップ産業複合体」)はどこに向かうのかという不安が頭に浮かぶ。

最近の違法コンテンツのダウンロード違法化(送信側ばかりではなくダウンロード側に処罰を可能にする)などの動きは、今でも「うた」以外の部分に原因を求めるレコード会社の不毛なあがきなのだろうか。

最後に筆者のつぶやきにも似た結びの言葉を引用する。

CDが売れなくなったことについて、「外部の敵」を非難することには熱心だが、「自分たちが送り出す楽曲は、今のままでいいのか」という真剣な議論や検討の声が全く聞こえてこないのだ。そういう反省がないまま「外部の敵潰し」ばかりを続ければ、リスナーの反感を買うだけの結果に終わりかねない。そろそろ「タイアップなどなくとも、人々の心に響くうたをつくろう」というごく単純明快な「製品内競争」が始まってもいいころではないだろうか。

Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 (岩波新書)Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 (岩波新書)
烏賀陽 弘道

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