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2010/02/15

浜井浩一 芹沢一也「犯罪不安社会 誰もが「不審者」?」

「激増する少年犯罪」というマスコミ(マスゴミ?)報道やTVコメントに対して「統計を見れば増えていないことは明らかだ」と社会学者などが返答する、というやりとりは日常の光景になってしまった。

しかし、このやりとりだけだと余り深まって行かないし、不安な気分の元は何なのかがいまいちわからない、という不満が解消されない。そのあたりのもやもやの根本を割と解消できるかも、という一冊。

統計と刑務所、警察の事情の側面からは、
  • 不可解な事件は減っている
  • 刑務所は社会的なセーフティーネットからこぼれた末に犯罪を犯した受刑者が増えている
  • 無期懲役は終身刑化している
  • 警察は困りごと相談を積極的に受けていることで負荷は激増。
  • 認知件数は積極的な相談対応で増えたから見かけ上検挙率が下がる。
  • 重大犯罪に限れば検挙率は変わっていない。
一方、社会の側面からは、犯罪が増えていないのになぜ「安全な社会のためにコミュニティを復活させよう」というような語られ方をしているのか、という点を考える。
  • 環境犯罪学(破れ窓理論)⇒安全・安心コミュニティのためのパトロールの流れは正しいのか?
  • 地域安全マップなどの活動は犯罪防止に役立つのか?
  • かえっていろいろな人を排除する方向に働き、ひいては「相互不信社会」を作っているのでは?
刑務所に健康な人が余りいない、であるとか、「子どもを守れ」で始まった活動が、かえって不安感を増してしまっている、と説明されてみると、なるほど、と思う。

地元PTAでも、「子ども110番の家」を地域にお願いして回ったり、自転車の「パトロール中」の札を付けてもらったりしている。この本に書かれているように、これらの活動の効果測定は全くしていない。というか、たぶん、事件はほとんど起こらないので効果の測定しようもないのだ。

いろんな人を「不審者」として排除して行くロジックは、「ニート」を排除して行くロジックと根っこは同じような気がする。結局のところ、「みんなでパトロール」をPTAが推進する前に、その中で育った子供たちが作る社会はどうなるのかを少し立ち止まって考えてみよう、ということかな。そう言ってみても、今のPTAでは「子どもが犯罪に巻き込まれる」恐怖が強くて、受け入れられないような気がする。

そういう意味では、犯罪被害者の立場の強化は必要だとしても、もう少し、信頼感のある社会ができるような基礎づくりはなんとかしてやっておく必要はあると思う。


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