著者は、評論の中でも「学術8割、はみ出し2割」のような学問に根差しながら論文では言えないような大胆な仮説や、素人向けの省略があるようなものを念頭において書いている。しかし、最後の第7章では「エッセイストのすすめ、清貧のすすめ」というタイトルで、小説がジャンルとして縮小している現在では伸びる分野はエッセイだろう、と書いている。
まえがきで
私が本書の執筆を引き受けたのは、なにより私自身が、読んで、書く、ということが好きで、そういうことの好きな人も基本的に好きだからである。あとがきで
引き受けると同時に、物書きというのが決してもうかる仕事ではない、ということは強調しなければならないと決心した。という。
著者が有名になった「モテない男」が出版されるまでの苦労話や、論争の苦しさなど、物書き生活の苦労を詳しく説明し、清貧でもいいと思う人には物書きをすすめたい、と、実際的なアドバイスをしている。
文中の文献の引き方や、柄谷行人の有名評論の論評を読んでいると、著者は本を読むことも書くことも好きだということがよくわかる。
今はそれほど評価していない本を「読んだときは感激した」とか、大学の同級生や先輩後輩が執筆活動にはいるのをうらやましく見ていたとか、ここまで正直に書かなくてもいいのになあ、と思うくらいに書かれている。
読んでいて不思議と楽しい本だった。
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