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2012/02/25

読売新聞2012年2月24日朝刊 「税と安心 一体改革の行方」

連載らしいのだが、ちゃんと読んだのはこの日が初めて。

一面の記事はスウェーデンの夫婦と日本の夫婦の比較。スウェーデン人夫婦は7万クローネ(84万円)から所得税など2万クローネ(24万円)を徴収される。消費税25%のスウェーデンは保育費用無料、育児休暇では80%の報酬を給付、など見合った分の給付があるから「納得感」がある。それと比較すると日本の子育て中の夫婦は64万円の月収があり税と年金保険で13万円負担するが消費税は5%。しかし、小学校2年と2才の子供の保育・教育費で11万円以上で、豊かという実感はなし。

三面では、年金・医療・介護の給付費用は約108兆円で保険料6割、税4割の負担。国負担は約29兆円。例では72才(60才定年)の男性が270万円厚生年金と170万円の企業年金で毎年ヨーロッパ旅行に行き、子孫の世代に負担させたくないから「消費税増税も受け入れる覚悟だ。」と。
84年生まれの負担が4585万円、43年以前生まれは受益が4875万円と対比し、全国民負担にするしないので消費税増税が必要、との論理になっている。

かなり違和感を感じるのは、世代間格差の問題など今わかったことではなく制度を設計した時点で明らかだったこともすべて消費税増税で緩和できるとの論理になっていることだ。引用されている一橋大学の小黒教授の以下の引用で記事が終わる。
「制度を支えるには、主に現役世代が負担する所得税ではなく、高齢者も含め全国民が支払う消費税の税率引上げが望ましい。負担が増えても、それに見合った保障を受けられると実感できれば、貯蓄が消費に回り、景気の回復にもつながる。」
違和感がどこから来るのかを考えると、記事の暗黙の前提は、消費税増税分が社会保障に全額使われること。しかし、実際には1%が保障に行き残りは財政再建に行くはずだから、負担が増えた分が見合った保障にはならないことが既にわかっている。

また、スウェーデンの事例を保育や育児に限って感がると片手落ちで、年金や保険の制度も個人別に管理される体制により近いスウェーデンの制度を(意図的に?)書いていないようだ。後半の年金の話は国内に限り、前半はスウェーデンとの対比という「いいとこどり」の記事のストーリーはわかるんだけど、三面の話題は年金なのだからスウェーデン人の夫婦と日本の夫婦の年金の比較もしないと。

老人がどんどん増えるので今の制度を続ければ保障費はもっと増える。負担ももっと増えるはずだ。消費税を上げても追いつかないって話は野田総理大臣(2012年2月現在)も言ったはずなので、この記事の描くような未来はなさそうに思える。

年金といえば、CS朝日ニュースターの「ニュースの深層」萱野稔人津田塾大准教授の回では、何度か年金の積み立て方式を萱野氏が話題にする。
視聴した回ではゲストは割と否定的で、指摘される欠点は二つあった。
  • 老人が長生きするので積み立て分では不足する。それをカバーする運用ができないのでは
  • インフレが起こった場合、積立額が目減りするリスクがある (これを言ったのは公明党の幹部のゲスト)
 この二つのリスクは、制度の小規模な変更でなんとかしたいという今の案と比較すると、どういう違いあるかということも知りたかったりする。

地元海老名市ではこの数年間じわじわと国民保険料が上がっている。これは増税とは別に発生する負担増だ。国のレベルでは増税以外の負担増は言及されていないけど、扶養控除なども減っていくのでおそらく小黒教授の言うような世界は来ない、と読者は思っているのではないだろうか。

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