天童 荒太の他の作品(「家族狩り」など)は読んだことがないし、この作家についての予備知識もほとんどない。「包帯クラブ」執筆後のインタビューも読後に見つけて読んだ。その内容から判断するとかなり重い話を書く作家のようだ。2008年の直木賞を「悼む人」で受賞。
この作品は、ある町での高校時代のことを大人になった主人公ワラが「包帯クラブ」のウェブサイトにレポートの形で書いた、と言う設定。レポートを送ってもらった友人やそれを読んだ仲間が「今」を語るページがところどころに挟まるという構成が面白い。
文体も内容も「軽め」のジュルナイル小説風の体裁を取っているが、そういった小説と雰囲気が違う。
「包帯クラブ」は誰かが心に傷を受けた場所やものに包帯を巻き、それを撮影してその人に渡す。それだけの活動(?)をする。このクラブが始まった数か月の物語。
主人公は
人が受けた深い傷に、わたしたちができることは、ほとんどないように思う。でも、相手の沈む心を想いながら包帯を巻くことで、<それは傷だと思うよ>と名前をつけ、<その傷は痛いでしょ>と、いたわりを伝えることはできるかもしれない。
どれだけの慰めになるかはわからない。
でも、相手が心に抱えている風景が、血まみれの廃墟のようなものだとすれば、そこに純白の包帯を置くことで、風景が変わって見えることもあるんじゃないだろうか…。
と言う。「癒し」と言うよりは少し控えめな「悲しみへの共感」みたいなものの表現として包帯を巻く、という行為がある。現役高校生たちはこの小説に共感するのだろうか。
著者が間接的に伝えたかったものは「共感」と「希望」なんじゃないか、と思う。
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