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2009/03/16

篠原菊紀 「不老脳 40代からの脳のアンチエイジング」

最近、会話に「アレソレ」が増えてきた方へ…
大丈夫!
実は、脳は40代から伸びるんです

という帯の惹句は間違いではないが、脳トレの本ではない。筆者が行っている脳のトレーニング問題も掲載されているにはいるが、中心となるのは、年をとるに従って脳の機能がどう変化し何が良くなるのか、それを活用するにはどのようなことに気を付けて生活するのか、についてである。

年をとるに従ってよくなる脳の働きは、蓄積される記憶、結晶性知性や統括性知性といった機能、人生観や社会観など「観」の機能である。「不老脳」とは年を取ってから良くなる部分を活用する真の「老脳」とも言える。しかし、これらの年を取ってから発達する機能を活かすには、脳を若々しく保たなければならない。若々しく保つには30代,40代から衰えはじめる「ワーキングメモリ」(頭のメモ帳)の多重使用のレベルを落とさないことが肝心である。年をとっても社会参加し、人と会話したり、いくつかの作業を同時に行うなどの生活上のトレーニングがかかせない。

ワーキングメモリーを鍛えるには、何かに打ち込み能力を伸ばそうと努力を継続すること。これにより持続する意志や工夫を行うことでワーキングメモリーを鍛え統括性知性を維持向上させることにつながる。

脳を若々しく保つには
  • 適度な運動を行うこと(ちょっときつい運動が脳を活性化する)
  • チャレンジ精神を持ち続けること(ちょっとがんばるで自分を「更新」しよう。リタイア後は「3年計画」)
  • メタボリック症候群対策は脳にもいい
  • 他者を理解すること、柔軟な使命感を持つこと
などのポイントがある。慣れた作業をやるだけでは活性化しない脳でも心をこめてキャベツを刻むことで活性化するように「気合」で活性化の度合いが変わるらしい。

最近、ふっと気を抜くと直前にやっていたことを忘れたりすることが多くなってきた。ワーキングメモリーの機能が落ちてきているのだろうなと考えながら読んだ。帯に関して言えば「40代から伸びる」は間違いではないが正しくは40代から「伸ばせる」ということだ。

最後の4章は「第二の人生の生き方が”不老脳”の質を高める」が著者が最も言いたかったことではないだろうか。老人の知性は社会に還元するべきである。自分の知性が社会の役に立つと信念を持てば、社会のために行動する時ドーパミンが多く分泌する。それが「やる気の自己増殖」を引き起こすのではないか、と。

超高齢化社会では高齢者にたいして社会での労働生産上の役割を用意する必要がある。真に「敬老」的な社会を実現していくために政治を動かそうという意識を持ってほしい、と今後自らが老人となる「団塊」の世代に呼び掛けている。

脳研究の知識も紹介されている。「脳は筋肉に比べるとトレーニングの効果が出やすく持続する(1か月1回のトレーニングでも効果がある)」「いわゆる脳トレやテストはできない方がトレーニングになる」などが興味深かった。

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