ページ

2009/04/22

竹内慎司 「ソニー本社六階」

ソニー(株)の経営企画や事業部での勤務での経験をまとめた一冊。暴露本的なタイトルだが、実際には日本に限らず企業のどこにでもある問題がソニーにもあった、と言うに過ぎず、過剰な内部情報はない。

驚いたことはいくつかある。たとえば、実質無借金経営だったソニーが映画事業の「無駄遣い」によってかなりの短期間で膨大な借入金を抱えることになっていたことや、これによる赤字が株主へのレポートではかなりぼかされたものになっていたこと、ISP事業に絡むトラッキングストック発行が実はすぐれた施策ではなかったこと、などなど。世間の評価とのギャップが大きかったのだ。

O(とアルファベットの仮名で呼ばれるが、簡単に特定可能なので意味がないような)社長以下の経営体制の中で著者の言う「モラル・ハザード」を抱えていく様子は、どこの会社でもありそうな(というか、むしろ、経済小説などで繰り返し書かれているような)ことであり「特異な」問題ではなかったのではないか。
著者はO社長の言動には割と批判的で、6億円の退職金を受け取ったことについても疑問を投げかけている。

本書のamazonでのコメントを見ると、同業他社勤務経験者と称する人が、どこも同じようなものだ、と書いていた。それが事実かどうかはわからないのだが、似たようなことは日本だけではなく世界中の企業で起こっているのではないだろうか。だからこそ、数少ない成功例が特別に注目を浴びるのだし、「不機嫌な職場」のような本がベストセラーになることもあるわけだ。

「ソニーが特異な会社だ」と思いこむ日本社会の「特異性」の原因は何なのだろう、と、それがひっかかる一冊ではある。

この出版社が今は存在しないようで、中古本のみでしか入手できないようだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿