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2011/08/06

勢古 浩爾 「定年後のリアル」

岩波書店から出た「定年後」の本を読むと、登場する人たちが何かしら生きがいを見つけて、社会やサークルなどのつながりを維持しながら元気に暮らす、という内容が多かった。
しかし、この数年、団塊の世代が定年に突入し、年金も今はもらえても先行きがきびしそうだ、となると、定年後の生活の見通しがあやふやになってくる。

一方で、老後資金に何千万必要だ、とか、孤独死を避けるにはどうするか、などなど、個々の問題に対する情報は増加している。

自分の生活状況は自分だけのものなのだから、「平均的なリアル」とは違う。心配なのはわかるが、すぱっと解決することができないことがわかっているのだから、過剰に「問題」化せずに生きていくしかないではないか、というのが著者の考え方だ。

たとえば、上野千鶴子が書いているのは東大教授の老後であって、あなたの老後とは違うのに、そこに引きずられても仕方がないだろう。これをいうために、上野をぼこぼこにやっつけているのは面白かった。

一貫して、自分視点から書かれているので、「余命一年のつもりで生きている」なんていいながらも、ちょっと旅行もしてみたい、なんて書いてしまうようなノリだ。

定年後の対策ができてない、と焦っている人が読むと、このレベルでもいいのか、と開き直って落ち着けるかも。