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2009/12/14

田中秀臣 「雇用大崩壊」

今の日本の不況は2段階になっており、2006年の日本銀行の金融引き締め転換の第1段階とリーマンショック以降の世界同時不況の第2段階との2重の不況になっている。そのため、海外の景気浮揚により輸出産業が息を吹き返したとしても、日銀の政策が改善されなければならないだろう。

著者によれば、現状の雇用の崩壊の対策には、学生への職業訓練などとともに「イス取りゲームのイスを増やす」ための景気対策が不可欠である。そのためには日銀はインフレターゲット政策をとるべきである。ところが実際には、日銀は金融緩和には消極的な政策を取っている。

失業者(特に若年)の増大がある程度継続すると、この子どもたちへの教育その他が十分に行われないため社会的に低収入層が固定化してしまうことが予想される。潜在的に分断され社会不安を抱えてしまう前にインフレターゲット政策により日本が成長政策に転換するべき。

雇用の流動化や農業・介護への雇用増などの「対策」は、その個々の提案を検討した上でこれは対策としては弱く、不況を解決しないままで雇用が増えるというアイデアが一種の幻想に過ぎない。

現役世代の雇用環境・経済状態を改善することができれば税収・年金も結果的に改善することは間違いない。失業が増えれば年金を払う現役世代が激減するのだから、回り回って結局高齢者にも負担を強いることになるはずだ。失業を減らさないことには何も解決しない。なぜ失業が長期化するかと言えば不況が解消していないからだ。景気回復ための政策を取るのは日銀と政府の大きな役割だ、と言うのが一貫した主張。

この本を読んだ後で、新聞の日銀からのコメントを読むと、確かに著者の「日銀はただ単に前例踏襲で何もしないだけなのだ」というのが当たっているのではないかと思える。


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