ページ

2009/12/20

本田由紀、内藤朝雄、後藤和智「ニートって言うな」

ブームが去って定着してしまった「ニート」という言葉。2000年代半ばの「ニート」言説の大流行を3人が自分なりの問題点を明確にするという本。3人の接点が(もちろん、お互いの著作やインターネット上の発言は知っているはずだが)本田由紀のはてなのコメント欄だというのが面白い。


英国ではマイノリティが社会から排除される問題として 「16歳から18歳の(失業者も含む)学生でもなく働いていない人たち」を分類するためにNEET(Not in  Education, Employment, or Training)という単語が出来たのに対して、日本では労働省が定義を拡張しており「16歳から35歳の学生以外の無業者で求職行動を取っていない人」 であるが失業者を含まない集団、となる。

三人から見た「ニート」の問題は、

  • 働く意欲があり、今は(体をこわしたりして)求職活動を取っていない人は含むが、フリーターや求職中失業者は含まないことである。この3つのグループは労働意欲はあるという点では一群として扱うべきもの。この不安定な群にいるのは雇用の仕組みの問題なのである。
  • また「ニート」が働く意欲のない「犯罪親和層」「ひきこもり」など専門の対応が必要な群と雇用訓練が必要な群、失業している群など、必要な対策が異なるにもかかわらず「ニート利権」(田中秀臣のいう「若者食い物利権」)の下に大規模な予算で「対策」を打つのは誤りではないか、ということも別の問題である。
  • そもそもの問題として、新卒採用されなければ安定した雇用がないという日本の採用体制にはじかれた若年失業層は不安定雇用から安定雇用へ移行できない社会の構造を改善しなければならないのである。
  • 「ニート」に関する俗流言説は、「ひきこもりが増えた」など「情けない若者」言説、「少年犯罪が増えた」など「凶悪化した若者」言説の2つの流れに沿って、「ゲームのやりすぎ」「外遊びをしない」などの「いいがかり資源」を燃料にしてどのようにでも応用できる構造になっている。
  • 失業問題である若年非就業問題を「個人の努力が足りない」「親の育て方の問題」という個人の問題として回収することに手を貸す概念となっている。さらにメディアによっては「困った若者」という捉え方を強調している。

など。

3人の著者の提言はそれぞれに方向性が違っているのだが、それについて本田由紀は「それは問題ではな」く、「多様な意見と知恵を結集して練り上げられていくべきもの」としている。
2009年末の民主党の雇用対策の中では、というか現状の企業の採用はまだ「新卒重視」の流れは変わっておらずこの方向を転換していくことは日本の社会全体・企業にとっては重い課題だ、ということだろう。その前にリフレ政策によって経済成長を実現しないと採用数が減少するばかりであるというのが一番の問題だが。


0 件のコメント:

コメントを投稿