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2011/01/06

ヒラリー・ウォー 「ながい眠り」

小さい郊外の町の不動産屋に泥棒が入った、という事件から殺人事件が発覚する。
この殺人事件を追いかける警察署長(小さい警察なので署長自ら捜査を担当)が、捜査の袋小路に入り込みながら犯人を追いかけて行く。

最後までほとんど捜査は進展せず、署長の推理は空振りばかり。体裁としては本格推理物なのに、推理して捜査、結果はぼろぼろ、の繰り返し。読んでいる方は「今度は何かわかるのか?」と期待しつつ「ああ、やっぱりだめか」となる。

真相がわかると、突然、ぷつっと唐突な感じで終わる。この終わり方がカッコイイ。探偵小説っぽい。
終わりまで読むと、途中の捜査は余計な枝葉をつぶすという役割があり、その結果正解が残っていたのだと不思議な納得感が生まれる。

この小説は「文学フリマ」の「松恋屋」で入手した「サバービアとミステリ 郊外/都市/犯罪の文学」川出正樹/霜月蒼/杉江松恋/米光一成 対談 の中で言及されていたことから購入して読んでみた。
ヒラリー・ウォーはサバービアなものを舞台とした小説の嚆矢、だそうだ。50年代アメリカでサバービアが出現し、そこを舞台にした事件の着想が出てくる時期、ということになるのだろうか。

集まる情報は手掛かりなのかすら分からないようなぼんやりしたものばかり。この手掛かりのなさがヒラリー・ウォーのサバービアに対するイメージを確実に伝えているとも言えるかも。

50年代だから科学捜査も新聞記者ものんびりしている時代で、もちろん携帯電話もないので、「今だったらこういうことはないよなあ」なんていう場面も出てきて、今と比較していろいろ空想することも多く、単にミステリを読む楽しみにプラス「昔話の楽しみ」みたいなものがあった。



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