ページ

2012/04/08

畠山 理仁「記者会見ゲリラ戦記」

TBSラジオdigにゲストで登場した著者のそのときの話に興味があり、しばらくして出版されたこの本は気になっていた。近所の書店では棚にみつからず外出したときにたまたま見つけて買っておいたのをやっと読了。

新聞やTVだけから情報を取っていると、「オープン化」はすでにかなり進んでおり、上杉隆がエキセントリックな文句を言っているだけに見える。しかし、この本を読むと、大臣が半ば強引に物事を進めないと鳩山内閣での「オープン化」は進まなかったことがわかる。また、意外にも、鳩山総理大臣自身はあまり積極的なオープン化を進めることができていなかった。

2011年の3.11以降の福島第一原子力発電所の大事故以降の情報の出され方を見ていると、新聞や地上波TVは力を発揮できず、フリーなジャーナリストたちがいたことで情報が出てきたことが大きいと思う。東京電力や原子力保安院の会見の生中継で自分が最も驚いたことは「新聞やTVの記者もさほど鋭い質問をしない」ということ。

この本で亀井静香氏が言うように「自分で考える頭を持っていない」との批判が当たる記者もある程度の割合でいるような印象だ。

それにしても、やはりと感じるのは役所が大臣のいうことを聞かないのだ、ということ。
内閣府での会見のインターネット中継を役所が却下したことを著者が枝野大臣(当時)に確認すると、

「全く、自由のつもりです。今日も別に制約しておりませんよね?(中継を)しておられると思います」(枝野大臣)
あれ?なんかおかしい。事務方と言っていることが違う。
「私が要望したら『ご勘弁いただきたい』と」(畠山)
「連絡の行き違いかもしれません。私の立場としては全く。むしろどんどんやっていただきたい」(枝野大臣)
ここで事務方が大きな声でいきなり謝罪の言葉を口にした。
「連絡ミスで申し訳ございません!」
すると間髪いれず、日本インターネット新聞の田中龍作記者が大声で発言した。
「いや、連絡ミスじゃないよ!さっき彼(畠山)が申し出たら、頑として断ってたじゃない。ミスなんかじゃないですよ!」
「内部での連絡ミスでご迷惑をおかけしました。そういう意味でお詫びを」(事務方)
「今、大臣が言わなかったら、あなたはずっと規制して…」(田中)
「いや、してません。」(事務方)

一方、意外ではないこともいくつかある。記者会見のオープン化に消極的な大臣として名前が挙がっている筆頭が、前原国土交通大臣、ということ。馬淵副大臣が上申しているのに無視していた、というのはいかにも前原議員らしい、と自分は感じた。「いうだけ番長」と書いた産経新聞を出入り禁止にしたのと整合性のある行動だ。

逆に言うと、おばさん連中になぜか受けのいい前原議員が総理大臣になったら総理大臣会見はクローズになることは想像できる。そういう意味では総理大臣になってほしくない人だ。

この本の対談で岩上氏が言っているように、オープンな会見には参加する人の頭数が必要になる。これを満たすフリージャーナリストの層の薄さは解決が難しい(生活を成り立たせながら、記者会見に機動的に参加できる人材は少ない)問題。最終的にはフリー記者が存続できるインフラが必要になる。それはどうやって作ればいいのか。

さしあたり、岩上氏のIWJに寄付してみるところから始めようかな。

0 件のコメント:

コメントを投稿