アメリカでも状況は同じようなものらしい。クルーグマンはこの本で経済全体を見渡した解説を試みている。クルーグマンによると、経済にとって大切なこと(たくさんの人の生活水準を左右するもの)は3つしかない。それは、生産性、所得配分、失業。これ以外は間接的にしか重要ではない。まず最初にそう言いきってこの本は始まる。
クルーグマンはもちろん3つの最重要問題以外のことにも目を向けて解説している。たとえば、貿易赤字、財政赤字、G7などなど。そのなかで1章を日本に関する記述に割り当てている。この章は、翻訳者の山形も言うとおり「日本がどう見られているかというかなりバランスのとれた文になっている。」
簡単に内容をまとめてみると:
まず、日本は輸出はしても輸入はあまりしない国であるという事実がある。そのため、日本のやり口はちょっと違う、と見られている。また、90年代までは、日本はアメリカに投資はしたが、アメリカから日本への投資は難しかった。 さらに、アメリカに進出した企業は日本から部品などを輸入する量が他の企業と比較すると多かった。
一方、とはいえ、アメリカ経済全体を考えると、日本が、というよりも貿易や国際競争が左右するのは「ほんの端っこのとこでしかない。」
おまけに日本のバブル崩壊からの経済の不調が長く続いたため日本問題自体がなくなってしまった。
ということになる。
他にも、
- インフレを我慢するコストは実はたいしたことはなく、逆に、インフレを抑えることは生活に影響が大きい
- アメリカの貯蓄率が下がったことが貿易赤字の裏返し
クルーグマンは2008年のノーベル経済学賞を受賞した。この本はその業績との直接の関係はない。
原著第3版を山形浩生が翻訳した。以前の版に入っていた章を復活させて翻訳していたり、「日本がはまった罠」というちょっとお堅い論文をおまけにつけたり、というサービスをしてくれている。
0 件のコメント:
コメントを投稿