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2008/11/30

浅見定雄 「なぜカルト宗教は生まれるのか」

タイトルからは「カルト宗教」の発生の研究書かと誤解されそうだ。実際には著者が様々なカルト宗教とかかわった経験から、その問題点をつづったものになっている。その中には著者がかかわった「救出カウンセリング」の説明もある。

著者が繰り返し書いているところによれば、カルトは「先進国病」であり若者の迷い(自分探し)が深くなっていることと、神秘やオカルトへの接近 (そういうこともあるかもしれない、と思う人が多い)が原因とのこと。

カルト宗教のテクニックの一つであるマインド・コントロールについての説明の箇所はこういったことを平易に説明した本が少ないので、短い章だが価値がある。

普通の健康な人ならマインドコントロールにかかる可能性があり、専門家の間ではかかりやすい人は「自分だけは大丈夫」と思っている人だと言われているほどだとか。このあたりを読んでいると、最近、頻発している「振り込め詐欺」の被害者が自分だけは大丈夫と思っている、というのと似ている。おそらく、どちらも、普通の人であれば被害者となる可能性があるということなのだろう。

親子のかかわりについての記述やカウンセリングにあたっての親の「覚悟」を要求する態度は宗教学者であり教育者でる筆者の信念を感じる。カルト問題に対する簡単な解決策などないと言い切る著者の若者論・教育論としても読める。

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