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2011/05/12

ナシーム・ニコラス・タレブ 「ブラックスワン」

2011年3月11日の東日本大震災とその後の福島第一原子力発電所の事故の顛末(まだ終わっていない進行中の事故だが)を経験してから読むと、「もしかして、これを予期してたのか?」と思ってしまうような内容だ。

元トレーダーの著者の主な関心は、リーマンショックや、古くはLTCMの破たんと言った「予測不可能」なリスクについてだ。金融工学や統計学が扱うランダム性は、本当のランダムではなく、扱える範囲に絞り込んだランダム性であり、学者たちは正規分布(など定式化できるもの)に従うものだけを「ランダム」なものとして扱っている。
その結果、この分布から飛び出した事象が発生することは予測できなくなっている。

また、このような事象が発生したことを「追認」してなんとか枠組みを維持しようとする、というやっかいな性格がある。

金融市場が正規分布ではなくランダム(著者の言う「果ての国」)であることから、投資戦略は「超保守的で超積極的」な戦略になる。非常に安全なところと、大きなリスクがあって大きな利益が出ることもあるところへの分散だ。

日本人はリスクを嫌って大損をする、という一節があり、原発に関する東京電力や官庁の言い訳・行動はまさにこれだし、識者の「だから原発は…」「何百年前の地震は…」という発言は「追認のあやまり」そのものだと思う。

だとすると、ここで「津波は15m、地震はM9.0が起こり得る」と「学習」するのではなく、「予測不可能なことは発生する」前提で物事を考える態度こそが重要なんじゃないのかな。


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