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2009/06/19

菊池誠 「若きエンジニアへの手紙」

著者が直接見聞したトランジスタ草創期からのエピソードの数々。この本を読むとなんだか人に話したくなってしまう。それほどトランジスタのPN接合の発見からのエピソードは面白いものが多い。理系離れが進んでいる高校生や理科系の大学生、新人エンジニアたちがこういう本を読んで、仕事を面白くしてほしい。

著者は「研究は面白いものだ」というのが持論。
むすびには、研究は「知る喜び」に突き動かされた原始的とも言える行動なのだから、創造性の教訓じみた理屈などないと断言している。

半導体レーザーが複数の研究所でほぼ同時に実験に成功した話しや、ゾーン精製法の話しなども、教訓めいた話しよりも事実の面白さの方に引きつけられる。

著者の菊池氏の研究に向き合う姿勢が、本全体を研究のわくわくする「楽しさ」で満たしている。

それぞれの発見は、新しい理論ではないので、電気工学の学生ならば習っていることばかりだろうから、親しみを持って読めるはず。こういう「研究や開発は楽しい」という本はあまり見かけないから、この本は工学部の学生の課題図書あたりにはちょうどいいのではないか。

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