購買力平価換算で評価した一人あたりGDPの日本の順位は、24位。ということは、日本が特殊な事情を抱えていない限り、「のびしろ」は十分にある。日本同様に高齢化している国でも日本よりも裕福な国が多くあることを考えると、「高齢化」や「少子化」が経済停滞の理由とはかんがえにくい。
では、国民が幸せになるために経済政策をどのように作って行けばいいのか。成長政策、安定化政策、再分配政策の3つについて、「今の日本」に適用するにはどうするか、という点から説明してくれる。
「ゼミナール 経済政策入門」(初心者には難しいらしい)にかわる教材として使うことを想定しているので、大学1,2年生が経済学の入門講義でレポートを書くための課題として使えるように考えられている。
特徴の一つは、理論的な背景や用語が教科書っぽく丁寧に解説されていること。
新書の経済解説本だと「今の問題」にフォーカスが当たるあまり、基礎知識は少なくなってしまう。この本はそのあたりのバランスに気を使って書かれている印象がある。
自分は「パレート改善」という概念の内容はこの新書で初めて理解した。
素人が床屋談義をするにも、この本の前半で紹介される「ティンバーゲンの定理」「マンデルの定理」は理解しておくことは必要だ。
また経済学的な観点を持ってマスコミの報道や各種委員会を冷静に眺めるべきだ。
たとえば、高速道路についての政策を考える上で、本書にあるようにインフラという観点ではなく、電力会社などと同じ政策を割り当てる案は検討してもいいのではないか。こういう論点は出てきていない(どこかの委員会の議論の中で排除されている?)。
本書の成長政策の「市場の失敗」の「外部性」についての説明の中で、公共財とは
- 誰かが購入すると他の人に便益が及ぶ
- 費用を払っていない人を排除できない
ではどう考えるか。高速道路の建設の莫大な費用と比較してメンテナンスは費用が安いので、自然独占産業と考えた方がいい。したがって、それに適した政策である分社化によるヤードスティック、プライスキャップを割り当てるなどの方法がある。これが問題解決の糸口になるのではないか、というのが著者の提案だ。
結局のところ、政府の政策がまともかどうかを選挙の判断材料にする他ないとすれば、政策の評価も素人なりに経済学観点をもってしなければならないのだ。
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