第1章 バカ親の壁、第2章 バカ教師の壁、第3章 親と子の壁、あとがきにかえて
の4章からなる。最初の2章が対談、後半は藤原氏の文章。
川端氏が保護者であり聞き手である立場から、おそらく意識的に保護者の視点にバリエーションをつけて、校長である藤原氏の話を引き出そうとしており、それは成功している。
教師になって二年目の女性からの
教師になって二年目です。ほかの先生に劣らぬくらい一生懸命に学級運営をし、指導しているつもりです。でも、保護者からは頼りないと思われているようなのです。この相談に藤原氏は、自らの営業職体験を織り交ぜながら教師が「自分がいちばん勉強する」という姿勢を示すことだ、と答える。
先日、宿題のやり方を間違ってきた子がいたので注意すると、放課後、すぐに母親から電話があり、「先生のやり方じゃ心配なのよ!身につかないとたいへんだと思ったから、仕方なく私が教えているのに!」と言われてしまいました。お母さん仲間の間では「ハズレのクラス」とも言われているようです。
仮に少々頼りなくても、一生懸命学ぼうとしている人なら、きっとお母さんたちも「この先生を育てていこう」と思ってくれるはずです。これに対して、担任の先生のせいで学校に行きたくないといいだすようなケースは厄災では、と川端氏が話を振ったのを受けて、さらに、
実際の学校の現場でここまでのやりとりを校長もしくは他の教師とかわすことは通常の保護者にとってはかなりむずかしいことだ。逆にいえば、これだけの情報を事前に学校から保護者に向かって発信できていれば本書で取り上げられるケースはそもそも存在しないかもしれない。
もし、学年全体がほんとうに同じようなタイプの先生ばかりで、自分とぜんぜん合わないようなことがあれば、転校まで考えたほうがいいのかもしれません。しかし実際は、教師が五人くらいいれば、個性はばらけます。(中略)だから中学校では、担任がどうかということについて、生徒が受ける傷は小さい。しかしぼくは、学校生活のなかで、子どもが多少の傷を受けることは、あってもよいのではないかと思うのです。傷を受けることもない、試練もない環境では、子どもの成長は止まってしまうでしょう
ひとくくりに「モンスター」と呼ばれている保護者については、本当に無茶な要求をしているのは言われている数の四分の一程度であって、その他は「タイミング」と「コミュニケーション技術」の問題で、先生に余裕がなくて聞いてもらえなかったり、言い方がよくなかったので伝わっていないのではないか、と推測している。
第3章は短いが面白い。藤原氏が提唱する「納得解」、「情報編集力」などについての内容だ。
これからの成熟社会では「万人にとっての正解」を導き出すチカラではなく、個人が自分自身の価値観に照らして納得のいく「納得解」を導き出すチカラが重要となる。私はこれを情報処理力に対して「情報編集力」と呼んでいる。
人生においては、この「クレジット=信任の総量」のレベルを上げていくことが非常に大事だ。その原動力となる両輪が、「情報処理力」と「情報編集力」だと私は考えている。「あとがきにかえて」では、藤原氏が和田中での施策のいくつかを例にあげながら、
そして、これら二つのチカラの「基礎」をなすのが、「集中力」と「バランス感覚」だ。この二つは、絶対に子どもに身につけておいてほしいチカラである。(中略)逆に、小・中学校で集中力を身につけられなかった子どもが、大きくなってからそれを身につけたという例を私は知らない。実際、私がこれまで出会った「できる」仕事人たちのなかに、「ビジネスを通して集中力を鍛えました」という人はいなかった。
- 学校支援のための地域本部の設立
- 校長の兼業の許可
- 専任のソーシャルワーカーの設置
対談の中では学校の問題の一つとして避けられないPTAの問題も取り上げられている。これについては「対談を終えて」で川端氏がまとめて書かれている。 PTAをオープンにし、学校協議会を「正常」に機能させるなどの提案は、現在のPTAにかかわっている川端氏ならでは。PTAの自由参加が当たり前となり、選択し責任を負うPTA会員が実現するのはまだ先かもしれないが、この1、2年でPTAの問題点は徐々に表に出てきているのではないかと思う。川端氏のPTAの連載の単行本化も待ち遠しい。
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